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第三世代

ビアンカ編 鬼気迫る

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幼い未来みらいに対しての<手本>となるために、訓練中のビアンカは真剣そのものだった。ふざけるとか怠けるとか、そういうのは一切見られない。

もっとも、訓練そのものが、短時間で集中的に行う。密度の高いものを久利生くりうと一緒に考えてくれてて、精神的な集中が途切れないように考えられてるんだ。

だらけた姿を未来みらいに見せないで済むようにな。

それもあって、訓練中のビアンカはまさに『鬼気迫る』ものがあったと思う。

でも……

「ふー……っ!」

訓練のメニューを一通りこなした彼女が深く長い呼気を吐くと、未来みらいも一緒に、

「ふー」

と真似をした。凛々しく力強い彼女のことを、未来みらいは一目置いてくれてるのがよく分かる姿だった。

それを、あかりが笑顔で見守る。

ちなみに、あかりはビアンカ達とは同じメニューはこなさない。

あかりは僕達と違って<軍人>ではないからね。訓練よりも<気構え>を作ってくれると助かる」

久利生くりうはそう言ってくれていた。

確かに。あかりのおおらかな性格は、軍人には向いていない気が、父親の俺から見ても感じる。ビアンカほど集中して訓練はできないだろう。未来みらいの<手本>にするにはややリスキーかもしれない。

<悪い見本>にはなるとしても、それを未来みらいが理解できるようになるにはもう少し掛かるかもしれないしで、今はまだ<悪い見本>の出番はない。と。

悪い見本というやつは、受取り手が『悪い見本だ』と理解できずに『そういうものだ』と解釈してしまうと、後から訂正するのが大変なんだよ。だったらそういう解釈をされないように、最初から丁寧に対処した方がいい。好ましくない形で学び取られてから後で修正するというのは、さすがに無駄が過ぎるだろう。

子供にお手伝いをしてもらってそれで上手くできなくて後から手直しするような、そういう<二度手間>とも違う。

お手伝いが上手くできなくても、それが家事とかであれば、直接誰かに危害を加えるようなものじゃない。大きな被害が出るわけでもない。その手間をあえて承知の上で、事故がないようにちゃんと傍について丁寧に教えて行けば済む話だ。

と言うか、そうだな、たとえ二度手間になっても、その手間をかけても、丁寧に教えていくということと近いかもしれない。せっかく子供が『お手伝いしたい!』と言ってくれてるのに、

『二度手間になるから面倒くさいしやらせない』というのでは、後になって手伝ってもらおうと思った時に、

『余計なことはするなと言ったじゃん!』

みたいに思われて手伝ってもらえない。ということがあったりするからな。

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