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第三世代

モニカとハートマン編 決着

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肛門から直腸内にたっぷりと麻酔をぶち込まれた牙斬がざんは、それでもしばらくは抗って見せたものの、やがて目に見えて動きが鈍り、次いで意識も混濁し始めたらしく、あらぬ方向に攻撃を繰り出すようになった。

さらに三分が経過すると、それこそ泥酔者のように足がもつれ、その場で転倒する。

しかし転倒してもなお、何とか体を起こそうとしつつ牙を剥き、底知れない闘争心(いや、<憎悪>か?)を見せたけどな。とは言えすぐにそれさえままならなくなり、ぐにゃりと力なく地面に横たわった。

そこにテレジアが駆けつけ、窒息しないように気道を確保して酸素吸入を行う。

と同時に、せっかくなので、血液や脱落しかけていた鱗数枚や組織片を採取。詳細に分析するための検体を得る。

それら一連の作業を、四本の腕を同時に使ってまったく躊躇なくスムーズにテレジアはこなしてくれた。人間(地球人)では到底不可能なマルチタスクということだ。加えて、万が一、牙斬がざんが暴れても、ロボットであるテレジアなら修理が効くからな。

「救急処置完了。バイタル、安定しています」

それこそ普通に人間(地球人)の救急患者を処置したかのように、テレジアが淡々と告げた。

いかにもな<人間臭さ>を見せ始めているハートマンやモニカと違って、グレイと共に<軍属>的な冷淡さを見せるテレジアらしい対応だった。

さらに、シーツに包まれた牙斬がざんを、グレイが担架に載せる。

そこに、改良を加え、積載重量を二百キロにまで増やした<ワイバーン三型>が到着。牙斬がざんを載せた担架を抱え、すぐさま飛び立った。

それを、フライトユニットを装着して必要な機材を携行したドーベルマンMPM二機が追う。搬送中に牙斬がざんの容態が悪化した場合に、処置を行うためだ。そして、予定の地域に到着した後にも、目覚めるまでの看病もしてもらわなくちゃいけないし。

作業の精密さではモニカやテレジアには敵わないが、ドーベルマンMPMでも、素人の人間よりは頼りになる。

ちなみに、今回のフライトのために、ワイバーン三型とドーベルマンMPMのフライトユニットには、エレクシア用の予備バッテリーも積んである。その上で、ソーラーバッテリーを積んだ母艦ドローンと、ついでに基幹ドローンも派遣。今後、牙斬がざんの動向を監視し続けるための準備も始める。

こうして牙斬がざんの<移送>は始まったわけだ。

なお、がくの時に用心していた、

『不定形生物由来の生物同士で何らかの情報のやり取りがあるかもしれない』

という点については、今回の夷嶽いがく牙斬がざんの様子を観察していたものの、最初はこちらに気付いている様子が見られなかったことで、少なくとも夷嶽いがく牙斬がざんについてはその心配はなかったようだ。

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