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第三世代
モニカとハートマン編 牽制
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牙斬の爪を躱し、その腕に蹴りを入れた未来だったが、
「があっ!!」
と悲鳴を上げた。その未来の足から血飛沫が。
牙斬の全身を覆う鱗は、一枚一枚が刃物のように鋭く硬い。それに、人間(地球人)の体を持つ未来が蹴りを入れれば、逆に傷付いて当然だ。なのに未来は、悲鳴は上げながらも、怯んだ様子は見せず、牙斬の次の攻撃を躱して距離を取った。そこに、「ガンッ!」と銃声。同時に、牙斬の体が地面を転がった。
テレジアだ。テレジアが、未来が離れた瞬間を逃さず、ショットガンを放ったんだ。
もっとも、ショットガンと言っても、テレジアが重作業用の腕に持っているそれには、<スラッグ弾>と呼ばれる銃弾を装填してある。これは、ライフル弾のような<貫通力>ではなく、それこそでかいハンマーでぶん殴るような<打撃力>を得るための弾丸だった。加えて、生身であるビアンカや久利生や、簡便であるがゆえにその辺りを犠牲にしてあるドーベルマンMPMを大きく上回る精密性を実現していることで、散弾をばら撒く形でブレを補わなくても正確に狙い撃てる(それでもエレクシアには遠く及ばないが)からこその装備だ。
つまり、ハートマンやグレイのような打撃力を持たないテレジアに一時的にでもそれを与えるための装備ということでもある。
走る速度やパワーを含む<戦闘力>という点では戦闘用であるハートマンやグレイとは比べ物にならないものの、それ以外の基本的な性能そのものには大きな差はないテレジアにとっては、<鬼に金棒>的な装備とも言えるだろう。
そんな<スラッグ弾>を、テレジアは容赦なく牙斬に浴びせる。
だが、牙斬の方も、散弾ではないことをすぐに察して、躱してみせるように。散弾は、複数の弾丸をばら撒くことで牙斬でも躱しきれないものの(自動小銃よりはマシとはいえ)打撃力で劣り、スラッグ弾は、ハートマンやグレイの拳や蹴りに勝るとも劣らない打撃力を持ちながらも、ばら撒く形じゃないことで躱されてしまう。
なんとじれったいことか。
未来を狙おうとする牙斬を牽制するのがやっとの状態だ。
それでも、テレジアが牽制してくれている間に、ルコアが未来に飛び付いて、覆いかぶさった。
しかし、その瞬間、テレジアがルコアに当たらない射線を探すことになり、僅か十分の一秒足らずの時間ではあったものの、牙斬にはそれで十分すぎるくらいに十分だった。未来を庇うルコアに襲い掛かるには。
「ルコアッッ!」
俺の叫びなど無駄以外の何物でもなく、テレジアのカメラに、血飛沫(透明なのでただの水飛沫にも見えるが)が捉えられる。
牙斬の爪がルコアの体を貫いたことで飛び散ったものだった。
「があっ!!」
と悲鳴を上げた。その未来の足から血飛沫が。
牙斬の全身を覆う鱗は、一枚一枚が刃物のように鋭く硬い。それに、人間(地球人)の体を持つ未来が蹴りを入れれば、逆に傷付いて当然だ。なのに未来は、悲鳴は上げながらも、怯んだ様子は見せず、牙斬の次の攻撃を躱して距離を取った。そこに、「ガンッ!」と銃声。同時に、牙斬の体が地面を転がった。
テレジアだ。テレジアが、未来が離れた瞬間を逃さず、ショットガンを放ったんだ。
もっとも、ショットガンと言っても、テレジアが重作業用の腕に持っているそれには、<スラッグ弾>と呼ばれる銃弾を装填してある。これは、ライフル弾のような<貫通力>ではなく、それこそでかいハンマーでぶん殴るような<打撃力>を得るための弾丸だった。加えて、生身であるビアンカや久利生や、簡便であるがゆえにその辺りを犠牲にしてあるドーベルマンMPMを大きく上回る精密性を実現していることで、散弾をばら撒く形でブレを補わなくても正確に狙い撃てる(それでもエレクシアには遠く及ばないが)からこその装備だ。
つまり、ハートマンやグレイのような打撃力を持たないテレジアに一時的にでもそれを与えるための装備ということでもある。
走る速度やパワーを含む<戦闘力>という点では戦闘用であるハートマンやグレイとは比べ物にならないものの、それ以外の基本的な性能そのものには大きな差はないテレジアにとっては、<鬼に金棒>的な装備とも言えるだろう。
そんな<スラッグ弾>を、テレジアは容赦なく牙斬に浴びせる。
だが、牙斬の方も、散弾ではないことをすぐに察して、躱してみせるように。散弾は、複数の弾丸をばら撒くことで牙斬でも躱しきれないものの(自動小銃よりはマシとはいえ)打撃力で劣り、スラッグ弾は、ハートマンやグレイの拳や蹴りに勝るとも劣らない打撃力を持ちながらも、ばら撒く形じゃないことで躱されてしまう。
なんとじれったいことか。
未来を狙おうとする牙斬を牽制するのがやっとの状態だ。
それでも、テレジアが牽制してくれている間に、ルコアが未来に飛び付いて、覆いかぶさった。
しかし、その瞬間、テレジアがルコアに当たらない射線を探すことになり、僅か十分の一秒足らずの時間ではあったものの、牙斬にはそれで十分すぎるくらいに十分だった。未来を庇うルコアに襲い掛かるには。
「ルコアッッ!」
俺の叫びなど無駄以外の何物でもなく、テレジアのカメラに、血飛沫(透明なのでただの水飛沫にも見えるが)が捉えられる。
牙斬の爪がルコアの体を貫いたことで飛び散ったものだった。
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