上 下
1,202 / 2,554
第三世代

モニカとハートマン編 何も不思議はない

しおりを挟む
ビアンカの<指示>と俺の<命令>を受けたドーベルマンMPMが、一斉に加速。牙斬がざん目掛けて突っ走る。その姿は、馬にまたがった騎兵のようにも見える。それに対して牙斬がざんも、怯むことなく突っ込んできた。ここまででドーベルマンMPMなどそれこそ『眼中にない』くらいに脅威足りえないんだろう。牙斬がざんにとっては。

だが、実はそれこそが狙いだった。恐れずに突っ込んできてもらうことがな。

さても狙い通り、ドーベルマンMPMを侮って牙斬がざんが真っ直ぐに突っ込んできてくれた。するとドーベルマンMPMらは、装備していた<箱>を構える。

が、瞬間、牙斬がざんは何かを察したのか、天高く飛び上がった。すると、今の今まで牙斬がざんがいた空間を覆うように広がるものが。

金属を遥かに超える引っ張り強度を持つ樹脂製のワイヤーで編まれた<網>だった。コーネリアス号に搭載されていたものを急遽取り寄せ、装備させたんだ。にも拘らず牙斬がざんは、それを易々と躱してみせる。

自動小銃の弾丸が放たれてから躱すことができるような奴が相手だと、それより遥かに初速で劣る<射出式の網>ではこうなることは想定できていたから、本当はハートマンやグレイの攻撃である程度弱らせたところで使うはずだった。

それでも、空中に飛び上がった牙斬がざん目掛けてさらに<網>が放たれる。さすがに足場もない空中なら自由に動けないはずだからな。

なのに牙斬がざんは、自分目掛けて飛んできた網を逆に掴んで振り、それを他の網に絡ませて凌いで見せたんだ。

「なんだとおっ!?」

信じられない光景に、俺はまた声を上げてしまう。いくらなんでも無茶苦茶だ。

しかも牙斬がざんは、絡まった網をさらに振り回して、ドーベルマンMPMに絡ませてみせた。

なんだこれは? 本当にどういうことだ? いや、きょうの時点で決して低くない知性は確かに見せていた。だからこのくらいのことができたところで何も不思議はないのかもしれない。しれないが、それにしたって、なあ……

ドーベルマンMPMの包囲を易々と躱し、牙斬がざんはその背後にいたビアンカに迫った。

いかに重武装を施し、並の猛獣なら歯牙にもかけないくらいの攻撃力を備えた今のビアンカでも、牙斬がざんが相手では勝負にならないことは明白だ。

「ビアンカっ!!」

俺は思わず叫んでしまう。けれど当のビアンカは、冷静だった。ショットガン二丁を両手に構え、放つ。普通の人間ならやらないが、アラニーズとしての膂力を持つ彼女なら、まるで小口径の拳銃のように扱えてしまう。

ガンッ!! ガンッ!!

銃声が連続して響き、横っ飛びして躱そうとした牙斬がざんが弾かれるように地面を転がる。ビアンカが放ったショットガンの散弾が命中したんだ。

最も粒が大きく重く一粒一粒の打撃力が高い散弾を選んで彼女に装備させた久利生くりうの判断には、本当に頭が下がるよ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について

ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに…… しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。 NTRは始まりでしか、なかったのだ……

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

俺のセフレが義妹になった。そのあと毎日めちゃくちゃシた。

ねんごろ
恋愛
 主人公のセフレがどういうわけか義妹になって家にやってきた。  その日を境に彼らの関係性はより深く親密になっていって……  毎日にエロがある、そんな時間を二人は過ごしていく。 ※他サイトで連載していた作品です

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた

ああああ
恋愛
優は大切にしていた妹の友達に冤罪を掛けられてしまう。 そして冤罪が判明して戻ってきたが

処理中です...