1,196 / 2,387
第三世代
モニカとハートマン編 悲鳴
しおりを挟む
普通に撃っただけでは麻酔のアンプルが仕込まれた注射筒は容易く弾かれ、ただ地面に落ちただけだった。
こうなると他の方法を検討しなきゃならないが、今は取り敢えず、ハートマンの奮闘に期待したいところだ。
そんな俺達の期待に応えようとするかのごときハートマンの猛攻が、牙斬を襲う。
しかも、
「あなたに恨みはありませんが、私にも守るべきものがありますので」
とか、どこで覚えたのかまるでドラマや映画のようなセリフまで口にする。何と言うか、もっとこう、武骨なイメージがあったから、妙な違和感も覚えてしまう。しかし、これも、
<芽生え始めた個性>
というものだろう。
そして、四本の脚を実に器用に動かして軽快なフットワークを駆使し、とても生物とは思えない動きをする牙斬に追い縋る。
正直、スピードでは牙斬の方が上のようだが、ハートマンの方も、ロボットならではの無駄のない動きで対抗していた。加えて、六機のドーベルマンMPMを自身の体の一部として使うから、実質的な動きの点では牙斬を圧倒しているはずだった。
なのに牙斬も、背後にも目が付いているかのように後ろについたドーベルマンMPMへと頭を向けることさえなく飛び掛り、体を回転、鋭い爪で切り裂かんばかりに脚を繰り出し、ドーベルマンMPMの頸の部分を破壊した。
ハートマンらドライツェンの意匠を取り入れ、ただカメラやセンサー類を<顔>のように見える形に配置しただけのドーベルマンDK-aのそれよりは<ヘルメットとゴーグルを着けた人間の頭>にも見えなくもない頭部が、まるでボールのように宙を飛ぶ。
とは言え、機体を制御するための重要な部分は胸部に集中させているドーベルマンMPMにとっては、
『まだだ。たかがメインカメラをやられただけだ!』
状態であり、加えて今はハートマンが本体になっている上に他のドーベルマンMPMらのカメラを含むセンサー類により補うことができるから、ほとんど支障なく動くことができる。
だからそのまま、空中にいる牙斬に自動小銃を放った。
と、
「ギャンッッ!!」
思いがけない声が。
悲鳴だ。牙斬の。
まさかと思ったが、どうやら弾丸が股間に命中したらしい。そうか、股間か……!
俺はそう思ったものの、続けて別のドーベルマンMPMが放った自動小銃の弾丸が同じように股間に命中しても、今度は悲鳴を上げることさえなかった。
「ダメージが通る角度みたいなものがある?」
俺が呟くと、
「もしかすると肛門に当たったのかもしれない」
久利生がそう返したのだった。
こうなると他の方法を検討しなきゃならないが、今は取り敢えず、ハートマンの奮闘に期待したいところだ。
そんな俺達の期待に応えようとするかのごときハートマンの猛攻が、牙斬を襲う。
しかも、
「あなたに恨みはありませんが、私にも守るべきものがありますので」
とか、どこで覚えたのかまるでドラマや映画のようなセリフまで口にする。何と言うか、もっとこう、武骨なイメージがあったから、妙な違和感も覚えてしまう。しかし、これも、
<芽生え始めた個性>
というものだろう。
そして、四本の脚を実に器用に動かして軽快なフットワークを駆使し、とても生物とは思えない動きをする牙斬に追い縋る。
正直、スピードでは牙斬の方が上のようだが、ハートマンの方も、ロボットならではの無駄のない動きで対抗していた。加えて、六機のドーベルマンMPMを自身の体の一部として使うから、実質的な動きの点では牙斬を圧倒しているはずだった。
なのに牙斬も、背後にも目が付いているかのように後ろについたドーベルマンMPMへと頭を向けることさえなく飛び掛り、体を回転、鋭い爪で切り裂かんばかりに脚を繰り出し、ドーベルマンMPMの頸の部分を破壊した。
ハートマンらドライツェンの意匠を取り入れ、ただカメラやセンサー類を<顔>のように見える形に配置しただけのドーベルマンDK-aのそれよりは<ヘルメットとゴーグルを着けた人間の頭>にも見えなくもない頭部が、まるでボールのように宙を飛ぶ。
とは言え、機体を制御するための重要な部分は胸部に集中させているドーベルマンMPMにとっては、
『まだだ。たかがメインカメラをやられただけだ!』
状態であり、加えて今はハートマンが本体になっている上に他のドーベルマンMPMらのカメラを含むセンサー類により補うことができるから、ほとんど支障なく動くことができる。
だからそのまま、空中にいる牙斬に自動小銃を放った。
と、
「ギャンッッ!!」
思いがけない声が。
悲鳴だ。牙斬の。
まさかと思ったが、どうやら弾丸が股間に命中したらしい。そうか、股間か……!
俺はそう思ったものの、続けて別のドーベルマンMPMが放った自動小銃の弾丸が同じように股間に命中しても、今度は悲鳴を上げることさえなかった。
「ダメージが通る角度みたいなものがある?」
俺が呟くと、
「もしかすると肛門に当たったのかもしれない」
久利生がそう返したのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
163
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる