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第三世代

モニカとハートマン編 包囲

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牙斬がざんは強い。ドーベルマンMPMではまったく歯が立たない。もっとも、そうでなければ、<がくの後継>たりえないけどな。

正直、龍然りゅうぜんが相手でもドーベルマンMPM一体では確実に力不足だっただろう。しかしそれでも、数を集めて飽和攻撃を仕掛ければ対処できる可能性はある。データ上はそう見られている。

しかし、さらに駆けつけたドーベルマンMPM五機を相手にしても、牙斬がざんはまったく怯まなかった。普段はスタン弾を装填した自動小銃を使うものの、念のために装備してあった実包を装填した方の自動小銃で迎え撃ったが、引き金を絞ってから反応して躱してしまう。予測射撃によって躱した先を狙い撃って実弾が命中しても、毛皮の下に生えていた鱗がすべて弾いてしまう。しかも、龍然りゅうぜんの場合は実弾が命中するとさすがに強い痛みを感じていた様子もあったものの、牙斬がざんはまったく意に介していない。

それどころか、牙を剥き、

「ガァアアアアーッッ!!」

と咆哮し、襲い掛かってくる。

加えて、ただ凶暴なだけじゃないんだ。しっかりと目などは腕でカバーして、さらにその上で、ドーベルマンMPMらの間に敢えて入って、その包囲から出ていこうとしない。

これにより、僅かに射角が逸れた弾丸などが、反対側のドーベルマンMPMに命中したりもする。<フレンドリーファイア>だ。そして牙斬がざんは明らかに狙って行っているのが動きによって分かる。完全に包囲を抜け出す機会が何度もあったのに、敢えて抜け出すどころか自分から間に入っても来たんだ。

ドーベルマンMPM同士は完全に連携していて、機体は別々でも実際には<一体のロボット>として機能している。お互いの位置は完全に把握され、射撃のタイミングも確実に制御されているんだ。だからフレンドリーファイアも滅多には起こらない。起こらないが、どんなことでも<完璧>というものはない。当然、不確定要素は常に存在し、僅かなブレや、牙斬がざんの体をかすめたことで弾道が逸れたものが当たってしまうこともある。

これによっても、損傷が生じた。小改造により夷嶽いがくの<空気銃>程度の威力なら十分に防げるようになっていたものの、至近距離で自動小銃の弾丸がまともに当たればそれなりにダメージもある。

もっとも、フレンドリーファイアなんか狙わなくても、牙斬がざんの戦闘力ならたやすくドーベルマンMPMを撃破できるけどな。

事実、フレンドリーファイアで完全に機能停止したドーベルマンMPMはいなかった。それよりもやっぱり、牙斬がざん自身の攻撃で倒されていく。

<電撃>を浴びて回路が破損するもの。

強力な打撃によって回路が破損するもの。

そして、腕や頭部を食いちぎられるもの。

結局、五機のドーベルマンMPMが包囲しても、一分ともたなかったのだった。

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