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第三世代
モニカとハートマン編 寿命
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新暦〇〇三三年十一月三日
夷嶽の誘導はその後も続き、すでに百五十キロ以上離れている。
その間、夷嶽はサイゾウやインパラ竜を餌として捕え、草原に体を伏せて寝、<一頭の野生の獣>として普通に生きていた。
こうして、嶽と生物的に非常に近い夷嶽のような存在が生まれることで繁殖し、種として定着していったんだろうなというのが改めて確認できたな。
一方、ルコアの方も、ビクキアテグ村への順応を見せてくれていた。連泊も、二泊三日から三泊四日へと順調に移行している。
來への警戒心はまだ残っているものの、だからといってビクキアテグ村への訪問をためらうほどではなくなっていった。
そして、そんなルコアの様子を、ラケシスを抱いたメイガスが、タブレット越しに見守ってもいた。
こうしていよいよ、
「どう? このまま、村に住む?」
ルコアも一緒に暮らすために新しく作られた家での夕食の後で、ビアンカに問い掛けられ、ルコアは、穏やかに自分を見つめる久利生や灯を見て、
「お世話になっても、いいですか……?」
と、遠慮がちに問い掛けた。すると灯が、
「もちろん! 大歓迎だよ!」
満面の笑顔で応え、久利生も、
「ああ、灯の言うとおりだ。僕達は君を心から歓迎する。ありがとう」
イケメンスマイルで告げた。
この時の様子を見て、メイガスは、
『ルコアに自分は必要ない』
そう実感したらしい。
と、それとは別に、
「……」
すっぽんぽんで可愛らしいものを鎮座させた未来が、ルコアを見上げている。もうすっかり一人であちこち歩きまわるようになった未来は、ルコアのことが気になるらしい。サーペンティアンである彼女を恐れず、近付こうともする。
最初は、ルコアを警戒していた來に連れ戻されたりもしていたものの、自分で活発に動き回れるようになれば、クロコディアの母親は子供にべったりにはならなくなっていく。危険が迫れば守ろうともするものの、自分の目の届く範囲にいる限りは、あまり干渉しなくなっていくんだ。
特にこの時の來の場合は、彼女自身の年齢もあって、な。
おそらく未来が彼女にとっては最後の子供になるだろうと予測したとおり、最近、來からは、明らかに以前ほどの凄みが感じられなくなってきていた。その姿は、実の両親である力や悠よりも、マンティアンの刃が見せていたものに近い印象がある。
そうだ。いよいよ、ということかもしれない。
クロコディアの名前の素となった地球の<ワニ>には百年を超える寿命を持つものもいるというが、クロコディアはワニを連想させる姿と生態を持つというだけで、ワニじゃない。寿命は四十年強、長くて五十年ほどと今は見られている。
それで言うと、來にもまだ十年ほどは時間が残されている可能性もありつつ、捕食者であるクロコディアは、力が衰えると仲間を押し退けてまで餌にありつくことができなくなり、何より、<アーマードピラルク>のような他の強大な捕食者との戦いに敗れ捕食されるのが宿命だった。だから、生物としての寿命は四十~五十年くらいあっても、実際にそれを全うする者はそう多くないんだ。
夷嶽の誘導はその後も続き、すでに百五十キロ以上離れている。
その間、夷嶽はサイゾウやインパラ竜を餌として捕え、草原に体を伏せて寝、<一頭の野生の獣>として普通に生きていた。
こうして、嶽と生物的に非常に近い夷嶽のような存在が生まれることで繁殖し、種として定着していったんだろうなというのが改めて確認できたな。
一方、ルコアの方も、ビクキアテグ村への順応を見せてくれていた。連泊も、二泊三日から三泊四日へと順調に移行している。
來への警戒心はまだ残っているものの、だからといってビクキアテグ村への訪問をためらうほどではなくなっていった。
そして、そんなルコアの様子を、ラケシスを抱いたメイガスが、タブレット越しに見守ってもいた。
こうしていよいよ、
「どう? このまま、村に住む?」
ルコアも一緒に暮らすために新しく作られた家での夕食の後で、ビアンカに問い掛けられ、ルコアは、穏やかに自分を見つめる久利生や灯を見て、
「お世話になっても、いいですか……?」
と、遠慮がちに問い掛けた。すると灯が、
「もちろん! 大歓迎だよ!」
満面の笑顔で応え、久利生も、
「ああ、灯の言うとおりだ。僕達は君を心から歓迎する。ありがとう」
イケメンスマイルで告げた。
この時の様子を見て、メイガスは、
『ルコアに自分は必要ない』
そう実感したらしい。
と、それとは別に、
「……」
すっぽんぽんで可愛らしいものを鎮座させた未来が、ルコアを見上げている。もうすっかり一人であちこち歩きまわるようになった未来は、ルコアのことが気になるらしい。サーペンティアンである彼女を恐れず、近付こうともする。
最初は、ルコアを警戒していた來に連れ戻されたりもしていたものの、自分で活発に動き回れるようになれば、クロコディアの母親は子供にべったりにはならなくなっていく。危険が迫れば守ろうともするものの、自分の目の届く範囲にいる限りは、あまり干渉しなくなっていくんだ。
特にこの時の來の場合は、彼女自身の年齢もあって、な。
おそらく未来が彼女にとっては最後の子供になるだろうと予測したとおり、最近、來からは、明らかに以前ほどの凄みが感じられなくなってきていた。その姿は、実の両親である力や悠よりも、マンティアンの刃が見せていたものに近い印象がある。
そうだ。いよいよ、ということかもしれない。
クロコディアの名前の素となった地球の<ワニ>には百年を超える寿命を持つものもいるというが、クロコディアはワニを連想させる姿と生態を持つというだけで、ワニじゃない。寿命は四十年強、長くて五十年ほどと今は見られている。
それで言うと、來にもまだ十年ほどは時間が残されている可能性もありつつ、捕食者であるクロコディアは、力が衰えると仲間を押し退けてまで餌にありつくことができなくなり、何より、<アーマードピラルク>のような他の強大な捕食者との戦いに敗れ捕食されるのが宿命だった。だから、生物としての寿命は四十~五十年くらいあっても、実際にそれを全うする者はそう多くないんだ。
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