上 下
1,165 / 2,554
第三世代

モニカとハートマン編 次善の策

しおりを挟む
「なるべく倒さずに、こちらから離れるように誘導するというのが基本方針ということでいいんだな?」

久利生くりうが改めて確認してくるので、

「ああ。そうだ。きょうみずちがく、そして今回の夷嶽いがくと、倒すごとに強大になっていくのはほぼ間違いないと思うんだ。所詮は生物といえど、こちらの戦力も無尽蔵じゃない以上、リスクを増やすことはしたくない」

きっぱりと告げた。それに対して久利生くりうも、

「僕もその意見には賛成だ。軍という機構は、脅威から市民を守るために機能しているが、だからといって問答無用で攻撃し撃破を目指せばいいというわけじゃない。戦わずして脅威に対処できればそれに越したことはないんだ」

と。これについては俺も本当に助かってる。フィクションなんかだととにかく強硬に脅威を撃破することを主張したりするのが軍人の役どころだったりするものの、現実の軍人はそういうのばかりとは限らない。と言うか、<パワーバランス>というものもれっきとした<戦略>なわけで、『いつでも攻撃できるぞ』というポーズを見せる必要はあっても、それを実行に移すかどうかはまた別の判断だからな。

これをわきまえてないと、軍人がいつでもどんな時でもただひたすら武力を行使することばかりを考えてると誤解するんだろう。

軍隊を毛嫌いする人間にとっては、軍人がそういう<野蛮な奴ら>でいてもらわないと、批判するための根拠が薄れてしまうのかもしれないけどな。

だが、ここのように、紛れもない<命の危険>が身近な場所では、<戦いへの備え>を疎かにするのはそれ自体が自殺行為だ。こちらから仕掛ける必要はなくても、危険に対処しなくていいという道理はない。

そして久利生くりうは、そのことをわきまえている軍人だった。

「僕としても錬是れんぜの方針には従うが、万が一を想定しないわけにも行かないから、グレイ、ハートマン、そしてドーベルマンMPMによって電磁加速質量砲レールガンの運用を具申したい。エレクシアと電磁加速質量砲レールガン一丁での撃破はできなかった事実を踏まえて、コーネリアス号に装備されている電磁加速質量砲レールガン三丁をすべて使い、飽和攻撃の準備も行いたいんだ」

久利生くりうの意見具申に、俺も、

「つまり、電磁加速質量砲レールガン三丁で、どう躱そうと逃げ切れないように面攻撃を行うということだな?」

と確認する。

「そういうことだ。もちろん、三丁だけでは完全な飽和攻撃にはならないとしても、撃破の確率は跳ね上がるはずだからな」

「分かった。俺も、他にどうしようもない場合でまで撃破に反対する気はないんだ。万が一に備えてということであれば、了承する」

「ありがとう。感謝する」

こうして、誘導が上手くいかずにコーネリアス号に向かうようであれば対処するための<次善の策>についても、準備することになったのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について

ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに…… しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。 NTRは始まりでしか、なかったのだ……

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

処理中です...