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第三世代

麗編 銀河暦

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『当時は、亜光速ロケットでの入植が予定されてて、それが人体に与える影響を検証するために、人間に近い形をしたメイトギアが使われたってことだった』

シモーヌの説明に、エレクシアが、

「はい。その通りです。<Counterfeit Life Syndrome>、<偽生症>と名付けられた疫病が蔓延し封鎖された<惑星リヴィアターネ>での調査に、再資源化が予定されていたメイトギアやレイバーギアが投入されたのと同じく、再資源化が決定したロボットは、回収の見込みがない作業を行うためにもよく利用されています」

淡々と補足する。

せっかくなので、惑星探査の黎明期にメイトギアがどう関わっていたのかを、<惑星ハイシャインの観測衛星>として再利用されることになった<あさがお型亜光速ロケット>とそれに搭載されたメイトギアについて、詳しく触れていこうと思う。

まあ、推測も込みの情報らしいから、どこまで正確かは保証の限りじゃないけどな。



当時、火星、イオ、エウロパ、ガニメデ、タイタンなどを開発し生活圏へと変えた人類は、太陽系の外にも進出するべく、その足がかりとなる惑星を求めて探査を始めていたそうだ。

とは言え、まだ恒星間航行技術ハイパードライブについては理論段階で、人類が持つ最も早い宇宙船と言えば亜光速ロケットだった。

しかし、亜光速ロケットだと光の早さにも届かないわけで、実際の惑星探査に要する時間は、少なく見積もっても数十年単位、実際に入植までとなれば百年単位という世界だった。

その頃の人間(地球人)は、老化抑制技術もようやく実用化にこぎつけた段階で、健康寿命は百二十年をやっと超えた辺りだったから計画を立てた当事者達の多くは実際に入植までは辿り着けないという、世代を跨いだ計画だったわけだ。

そんな調子だから、亜光速ロケットに実際に人間を乗せるには心理的・倫理的なハードルも高かったそうで、そこでまず、人間に似せて作られたメイトギアを載せてテストを重ねることにしたそうだ。

で、実際に亜光速ロケットに乗って宇宙に旅立ったのは、最初の方こそそれ専用に開発されたメイトギアだったものの、運用データを検証するにつけ、

『高価な最新機種を搭載しても顕著なアドバンテージは見られない』

という結論に至ったことで、旧式化し市場価値がなくなり再資源化が決まったメイトギアを再利用する形に転換し、同時にますます多くの亜光速ロケットがメイトギアを載せて太陽系外へと旅立ったとのこと。

これが二十八世紀から二十九世紀に掛けての話だ。今の<星暦>が始まる前、シモーヌ達が現役だった頃の暦の<銀河暦>が始まった頃の話でもある。

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