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第三世代

麗編 相手が悪い

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とにかく、うららあらたのことは俺が気を揉んでも始まらないから、俺は俺の仕事をするとしよう。

その、<新しい集落候補地>は、俺達の集落から今度は南に十五キロほどいった場所だった。母艦ドローンによる簡単な調査で候補地はいくつか選定してあるから、そのうちの一つということだ。

こちらも、アリゼドラゼ村とよく似た環境だ。生活用水としては十分な水量がある小川が近くを流れつつも例の不定形生物まではいないことが確かめられている、絶好の場所だ。

ただし、この辺りの動物達はほとんどが俺達のことを知らないから、俺とシモーヌはローバーからは出ない。さっそく、ボクサー竜ボクサー達のお出迎えがあったんだ。

さすがにローバーには襲いかかってはこないものの、遠巻きに様子を窺っているのが、随伴させたドローンのカメラに捉えられているし、当然、エレクシアのセンサーなら丸見えだ。

「それじゃあ、頼む」

「承知しました」

俺の声に応えつつエレクシアがローバーを降りる。

現場の詳細なデータについてはエレクシアを通して確認する。彼女のセンサーに捉えられたそれを俺とシモーヌが持つタブレットに送信してもらうんだ。

そうしてエレクシアが植生や地面の状態なども確認し、そのデータを俺とシモーヌも見る。これも、今後はアリスとドライツェンが受け持つことになるな。

と、さっそく、

「ギイッ!!」

ボクサー竜ボクサーによる洗礼だ。が、当然、エレクシアにはまったく通じない。何頭ものボクサー竜ボクサーが彼女に群がるが、エレクシア自身はそれに構うことすらない。犬にじゃれ付かせたまま仕事をする飼育員のように、好きにさせている。

ボクサー竜ボクサーの牙も爪も、彼女のボディには小傷一つ付けられない。

それでいて、ウイッグに喰らい付いて引っ張ろうとしたボクサー竜ボクサーがいると、

「……」

黙ったままその顎を掴み、僅かに力を入れるだけで、

「ギヒッッ!?」

そのボクサー竜ボクサーは悲鳴を上げてウイッグを放した。

いやはや、頼りになるなあ。

もっとも、アリスとドライツェンの場合は、そのあまりに異様な姿にボクサー竜ボクサー達も強い警戒心を抱いて、すぐには襲い掛かってこないだろうけどな。

一見しただけでは、パパニアンやパルディアとそんなに違わないエレクシアだからこそ、襲われたというのもある。

なお、パルディアも食物連鎖ピラミッドの上位に位置する強力な捕食者プレデターではあるものの、ボクサー竜ボクサーの群れに一斉に襲い掛かられるとさすがに分が悪いので、普通は地上には長居しない。下手をすると負けることもあるし、ボクサー竜ボクサーもそれを分かってる。

地上でもたもたしているパルディアなど、十分、獲物になるんだ。

とは言え、今回、遭遇したのはパルディアなんかじゃない。要人警護仕様のメイトギア、エレクシアだ。

『相手が悪い』どころの騒ぎじゃないな。

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