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第三世代

麗編 両立

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人間(地球人)が暮らす世界は、これまでにも何度も触れてきたように、犯罪を未然に防ぐため、AIによる厳重な監視網が構築されている。

と言っても、普段はそれを意識することはない。AIは実に自然に平穏に日常生活の中に溶け込んでいて、『監視している』という気配を出していないんだ。ただ、明らかな不法行為や犯罪の準備を行っていると察知すると、各関係機関に通知。それを受けて各関係機関が裏付けを取って、不法行為や犯罪の準備が確認されたら摘発に乗り出すという形を取っている。

もとより、AIやロボットが、かつて人間の社会で軋轢を生み出していた諸問題を肩代わりすることで、わざわざ法を犯してまでどうにかしなきゃならない状況というものを軽減してくれているんだ。

貧困や格差についても、そのおかげで大幅に改善され、それを動機にしたテロは激減した。家事や育児疲れや介護疲れを原因とした事件や、性犯罪についても、メイトギアやラブドールの進歩に伴い確実に減っている。

ただ、そうやってAIやロボットに依存すればするほど、その状況を危険視する者達によるAI・ロボット排斥運動と、その中のさらに過激な思想をもつ一部の者達によるテロが引き起こされてるというのも、皮肉な話ながら現にある。

西暦が始まってからさえ約六千年。それだけの時間を経ても人間は<完璧>にはなれていない。まあ、紀元前を含めればそれこそ万年単位の時間を経ているわけだから、たった六千年程度じゃそんなものか。

それでも、地球人が時間を掛けて解決してきた様々な問題について知っているのに、なおもここで繰り返すというのもさすがに愚かに過ぎるってもんだろう。しかも、ここに生きる人間達のメンタリティは、明らかに地球人のそれとは違う。だったら地球人が辿った歴史を<朋群ほうむ人>達が繰り返すとはそもそも限らない。

となれば、

『どうせ無理』

なんて悟ったようなことを言わずに努力したらいいじゃないか。

そういう意味でも、うららあらたのことは、実は結構、重要な話だと思ってる。

『好きな相手を好きでいられる』

そして、

『好きになれないと思えばしっかりと断れる』

というのがちゃんと守られるかどうか。

人間(地球人)の世界じゃ、えてして、<好きになった相手>のことで社会的に袋叩きになったりすることがあった。

逆に、<好きでもない相手><好きになりたくない相手>とでも、本人の意思に関係なく強引に結び付けられてしまうこともあった。

俺は、そういうのは嫌なんだ。

誰を好きになっても構わないし、その一方で、『好きになれないと思えばちゃんと断れる』というのも守りたい。

それが両立されなけりゃ意味がないと思うんだよ。

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