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第三世代
メイガス編 母親の顔
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<命の期限>の話は、もちろん、誉や走達だけの問題じゃない。
この集落に暮らす深や、焔や、新ももちろん、ここから巣立って自然の中に生きる、明や丈や翔や彗もそうだ。
皆、残された時間は、寿命を全うするとしてもあと十年くらいだろうな。
特に、マンティアンの明や丈、アクシーズの翔や彗については、刃や鷹の例を考えても、誉達よりも残された時間が短い可能性は十分にある。
これは、命あるものにとっては決して逃れられない摂理。
事故や病気や天敵との闘いやらで命を落とすことは気を付けることで避けられる可能性はあっても、寿命については抗いようがないからな。光や灯だって、人間(地球人)の形質が強く出てることに加えて治療カプセルを使って肉体的なベストコンディションを保つことで二~三十年ばかり長くなるとしても、いずれは、だ。
とはいえ、俺の勝手でこの世界に送り出すことになった誉達の生涯を見届けることは、何度も言うように俺自身の義務だと思ってる。いよいよそれを果たす時が迫りつつあるということか。
胸が……痛いな……
覚悟はしてるつもりでも、自分が招いたことなのは分かっていても、<大切な人>を送るのは、やっぱり辛いよ。しかし泣き言を並べて逃げるわけにもいかないし、逃げられるものでもない。
『来るものは来る』
その事実と向き合わずになにが<大人>か。
併せて、ルコアのような<人間>達の受け入れ態勢もさらに整えていきたい。
それに、そうやって新しく迎えることになる者達のために働くことで、気が紛れるというのは確かにある。密達を亡くした時も、次々と生まれてくる孫達のために頭を使ってると、体を動かしてると、悲しさに溺れてばかりもいられなかったし、気力が湧いてくるのも実際に経験した。
『新しい命を迎える』
というのは、そういう効果ももたらすのかもな。
まあこれはあくまで<俺の実感>だから、誰もがそうなれる、誰もがそうあるべき、なんて風にも思わないが。そんなことを言い出すと、
『そう思えない奴は駄目な奴』
なんて決め付けにも繋がるだろう。俺はそんなことは望まない。そんな決め付けが、人間(地球人)の歴史の中でどれだけの軋轢を生み出してきたか、それを示す事例は数限りなくあるはずだ。
そうやって厄介事を生み出すのが分かっていながら改めていこうとしないのは、<愚の骨頂>というものだと俺は思う。
「いい笑顔してるね……」
ラケシスに乳を与えながら、メイガスが、ビアンカと談笑しているルコアの姿を映し出したタブレットを見ながら呟く。
人間(地球人)ほど自由に表情を作れないクロコディアの顔でありながら、彼女は、間違いなく<母親の顔>をしてたのだった。
この集落に暮らす深や、焔や、新ももちろん、ここから巣立って自然の中に生きる、明や丈や翔や彗もそうだ。
皆、残された時間は、寿命を全うするとしてもあと十年くらいだろうな。
特に、マンティアンの明や丈、アクシーズの翔や彗については、刃や鷹の例を考えても、誉達よりも残された時間が短い可能性は十分にある。
これは、命あるものにとっては決して逃れられない摂理。
事故や病気や天敵との闘いやらで命を落とすことは気を付けることで避けられる可能性はあっても、寿命については抗いようがないからな。光や灯だって、人間(地球人)の形質が強く出てることに加えて治療カプセルを使って肉体的なベストコンディションを保つことで二~三十年ばかり長くなるとしても、いずれは、だ。
とはいえ、俺の勝手でこの世界に送り出すことになった誉達の生涯を見届けることは、何度も言うように俺自身の義務だと思ってる。いよいよそれを果たす時が迫りつつあるということか。
胸が……痛いな……
覚悟はしてるつもりでも、自分が招いたことなのは分かっていても、<大切な人>を送るのは、やっぱり辛いよ。しかし泣き言を並べて逃げるわけにもいかないし、逃げられるものでもない。
『来るものは来る』
その事実と向き合わずになにが<大人>か。
併せて、ルコアのような<人間>達の受け入れ態勢もさらに整えていきたい。
それに、そうやって新しく迎えることになる者達のために働くことで、気が紛れるというのは確かにある。密達を亡くした時も、次々と生まれてくる孫達のために頭を使ってると、体を動かしてると、悲しさに溺れてばかりもいられなかったし、気力が湧いてくるのも実際に経験した。
『新しい命を迎える』
というのは、そういう効果ももたらすのかもな。
まあこれはあくまで<俺の実感>だから、誰もがそうなれる、誰もがそうあるべき、なんて風にも思わないが。そんなことを言い出すと、
『そう思えない奴は駄目な奴』
なんて決め付けにも繋がるだろう。俺はそんなことは望まない。そんな決め付けが、人間(地球人)の歴史の中でどれだけの軋轢を生み出してきたか、それを示す事例は数限りなくあるはずだ。
そうやって厄介事を生み出すのが分かっていながら改めていこうとしないのは、<愚の骨頂>というものだと俺は思う。
「いい笑顔してるね……」
ラケシスに乳を与えながら、メイガスが、ビアンカと談笑しているルコアの姿を映し出したタブレットを見ながら呟く。
人間(地球人)ほど自由に表情を作れないクロコディアの顔でありながら、彼女は、間違いなく<母親の顔>をしてたのだった。
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