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第三世代
メイガス編 母親
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クロコディアである今のメイガスにはシモーヌの姿もアルビノ的に見えるそうだ。ただ、少なくとも自分もシモーヌと同じだというのは理解できただろう。
「頭はすごく混乱してるけど、その一方で、なんかいろいろ腑に落ちた気はするよ。二千二百年も経ってたこととか、私が今の自分を受け入れようとしたのは、結果的に正解だったんだな……
もし、コーネリアス号に帰ろうとしてたって、正直、無駄だったってことだし……」
漆号機と拾弐号機が作った<席>に座ってこちらに向かいながら、メイガスは呟くように口にした。
俺達も、敢えてそれ以上はあれこれ言わない。彼女自身が必要だと思えば自ら問い掛けてきてくれるだろうと思ったしな。
実際、メイガスは、自分の中に湧き上がってくる様々な感情などを整理するために、黙っていたようだ。
寂しげに視線を伏せた彼女の姿が、この時の彼女の気持ちを雄弁に物語ってくれた気もする。
『たとえこうして<人間>と関わり合うことになったとしても、もうそこは<自分の生きていた世界>ではないということを悲しいと感じると同時に、だからこそすべてを割り切れそうにも思える』
というのをな。
何しろ、メイガス自身が後でそう語ってくれたし。
いずれにせよ、彼女にとっても『賽は投げられた』ということだろう。後は、俺達が彼女をいかに受け止めるかってことにかかっているんだろうな。
そうして三十分ほどかかって、メイガスは俺達の集落へとやってきた。
「いろいろ積もる話もあるだろうが、まずはうちの治療カプセルに入って回復をはかってもらいたい。話さなきゃいけないことは本当に山ほどあって、そのためにも体を休めてほしいんだ」
「分かった。お言葉に甘えるよ」
挨拶もそこそこに、俺は出産直後で本来ならゆっくりと体を休めたかったであろう彼女にそう告げた。
彼女としても、さすがにダメージは感じてたらしいから、セシリアに抱えられて光莉号の治療カプセルに入ってもらう。
なお、細菌やらなにやらについては、赤ん坊本人もそうだし赤ん坊の体に付いていたメイガスの体組織を先に分析させてもらって問題ないことを確認してある。
あと、
「赤ん坊のための搾乳をお願いしたいんだけど、大丈夫?」
落としたファンデーションを塗り直したシモーヌが、メイガスに問い掛ける。
「ああ…でも、初乳は自分でやりたいな」
とメイガスが応えたから、カプセルに入る前にベッドに座って赤ん坊を抱いて、自分の乳を含ませた。
その時の表情は、まさに<母親>そのものだっただろうな。
「ラケシス……」
一言そう呟いたのが赤ん坊の名前だということは、俺達にもすぐに察せられたのだった。
「頭はすごく混乱してるけど、その一方で、なんかいろいろ腑に落ちた気はするよ。二千二百年も経ってたこととか、私が今の自分を受け入れようとしたのは、結果的に正解だったんだな……
もし、コーネリアス号に帰ろうとしてたって、正直、無駄だったってことだし……」
漆号機と拾弐号機が作った<席>に座ってこちらに向かいながら、メイガスは呟くように口にした。
俺達も、敢えてそれ以上はあれこれ言わない。彼女自身が必要だと思えば自ら問い掛けてきてくれるだろうと思ったしな。
実際、メイガスは、自分の中に湧き上がってくる様々な感情などを整理するために、黙っていたようだ。
寂しげに視線を伏せた彼女の姿が、この時の彼女の気持ちを雄弁に物語ってくれた気もする。
『たとえこうして<人間>と関わり合うことになったとしても、もうそこは<自分の生きていた世界>ではないということを悲しいと感じると同時に、だからこそすべてを割り切れそうにも思える』
というのをな。
何しろ、メイガス自身が後でそう語ってくれたし。
いずれにせよ、彼女にとっても『賽は投げられた』ということだろう。後は、俺達が彼女をいかに受け止めるかってことにかかっているんだろうな。
そうして三十分ほどかかって、メイガスは俺達の集落へとやってきた。
「いろいろ積もる話もあるだろうが、まずはうちの治療カプセルに入って回復をはかってもらいたい。話さなきゃいけないことは本当に山ほどあって、そのためにも体を休めてほしいんだ」
「分かった。お言葉に甘えるよ」
挨拶もそこそこに、俺は出産直後で本来ならゆっくりと体を休めたかったであろう彼女にそう告げた。
彼女としても、さすがにダメージは感じてたらしいから、セシリアに抱えられて光莉号の治療カプセルに入ってもらう。
なお、細菌やらなにやらについては、赤ん坊本人もそうだし赤ん坊の体に付いていたメイガスの体組織を先に分析させてもらって問題ないことを確認してある。
あと、
「赤ん坊のための搾乳をお願いしたいんだけど、大丈夫?」
落としたファンデーションを塗り直したシモーヌが、メイガスに問い掛ける。
「ああ…でも、初乳は自分でやりたいな」
とメイガスが応えたから、カプセルに入る前にベッドに座って赤ん坊を抱いて、自分の乳を含ませた。
その時の表情は、まさに<母親>そのものだっただろうな。
「ラケシス……」
一言そう呟いたのが赤ん坊の名前だということは、俺達にもすぐに察せられたのだった。
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