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第三世代
当編 確信
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<当の嫁(仮)>の出産そのものは、順調だった。当が寄り添って彼女を見守るが、何もすることがない。
そんな中で、彼女は水中でぐるぐると体を回転させ自ら出産を促しているようだ。
そうして一時間ほどが経ち水面がさあっと赤く染まる。ぐーっと体に力が入ったかと思うと、次の瞬間、水中に没する。
「む……」
俺も思わず体に力が入ってしまうが、基本的にクロコディアの出産ではよく見られることだというのは、頭では分かっている。
と、ざあっと彼女が姿を現し、両手を掲げた。
「生まれた!」
「生まれた!」
俺とシモーヌが画面を見ながら声を上げてしまう。そう。<当の嫁(仮)>が手にしていたのは、赤ん坊だった。
だが、様子がおかしい。赤ん坊が動かない。
「まさか、死産……?」
俺の頭に、深が生んだ連の姿がよぎる。またあれが繰り返されてしまうのか……? 死産で生まれた我が子を母親が食ってしまうという光景が……
「錬是……」
シモーヌが俺の背中を撫でてくれる。
が、そうやって諦めムードの俺とは正反対に、<当の嫁(仮)>は、赤ん坊の顔に自分の顔を被せていった。いよいよ喰らい付くのかと目を逸らしそうになった俺の視線の隅に違和感が。
「え……?」
その違和感に引っ張られるかのように、俺は再び画面を見た。
するとそこには、大きく開いた口で、赤ん坊の鼻と口を覆って息を吹き込む<母親>の姿が。
「人工呼吸!?」
シモーヌが声を上げる。
確かにそれは、まぎれもない人工呼吸だった。クロコディアが知るはずもない救急救命処置。
「やっぱり……!」
瞬間、俺の疑念は確信へと変わる。
「彼女は、<人間>だ……!」
「まさか……!」
シモーヌも呟くものの、彼女は目の前の現実にそうそう目を背けるタイプじゃない。特に学者としての領分においては。
これまではあくまで『それっぽく見える程度』と判断できていたことで敢えて慮外としてきたが、今回のそれはどこからどう見ても人工呼吸以外の何ものでもない。
しかも、
「そこのドローンで監視してるあなた! もし医療技術があるなら、救援要請します!」
口の構造の所為で若干不鮮明ではあるものの、完全に人間(地球人)の言葉で話し掛けてきた。
こうなれば何も躊躇うこともないな。
「エレクシア! 救急救命モード! 当の子を救え!!」
俺がそう命じると、
「了解しました」
エレクシアも一瞬の逡巡さえしない。救急グッズを詰め込んだバックパックを掴み、弾かれるように森へと消える。
監視に使っていたものはスピーカーを搭載していないタイプだったので、声で返事をする代わりに、空中に飛び立たせ機体を振ることで<返信>。それを確認した母親は、明らかにホッとした表情になっていたのだった。
そんな中で、彼女は水中でぐるぐると体を回転させ自ら出産を促しているようだ。
そうして一時間ほどが経ち水面がさあっと赤く染まる。ぐーっと体に力が入ったかと思うと、次の瞬間、水中に没する。
「む……」
俺も思わず体に力が入ってしまうが、基本的にクロコディアの出産ではよく見られることだというのは、頭では分かっている。
と、ざあっと彼女が姿を現し、両手を掲げた。
「生まれた!」
「生まれた!」
俺とシモーヌが画面を見ながら声を上げてしまう。そう。<当の嫁(仮)>が手にしていたのは、赤ん坊だった。
だが、様子がおかしい。赤ん坊が動かない。
「まさか、死産……?」
俺の頭に、深が生んだ連の姿がよぎる。またあれが繰り返されてしまうのか……? 死産で生まれた我が子を母親が食ってしまうという光景が……
「錬是……」
シモーヌが俺の背中を撫でてくれる。
が、そうやって諦めムードの俺とは正反対に、<当の嫁(仮)>は、赤ん坊の顔に自分の顔を被せていった。いよいよ喰らい付くのかと目を逸らしそうになった俺の視線の隅に違和感が。
「え……?」
その違和感に引っ張られるかのように、俺は再び画面を見た。
するとそこには、大きく開いた口で、赤ん坊の鼻と口を覆って息を吹き込む<母親>の姿が。
「人工呼吸!?」
シモーヌが声を上げる。
確かにそれは、まぎれもない人工呼吸だった。クロコディアが知るはずもない救急救命処置。
「やっぱり……!」
瞬間、俺の疑念は確信へと変わる。
「彼女は、<人間>だ……!」
「まさか……!」
シモーヌも呟くものの、彼女は目の前の現実にそうそう目を背けるタイプじゃない。特に学者としての領分においては。
これまではあくまで『それっぽく見える程度』と判断できていたことで敢えて慮外としてきたが、今回のそれはどこからどう見ても人工呼吸以外の何ものでもない。
しかも、
「そこのドローンで監視してるあなた! もし医療技術があるなら、救援要請します!」
口の構造の所為で若干不鮮明ではあるものの、完全に人間(地球人)の言葉で話し掛けてきた。
こうなれば何も躊躇うこともないな。
「エレクシア! 救急救命モード! 当の子を救え!!」
俺がそう命じると、
「了解しました」
エレクシアも一瞬の逡巡さえしない。救急グッズを詰め込んだバックパックを掴み、弾かれるように森へと消える。
監視に使っていたものはスピーカーを搭載していないタイプだったので、声で返事をする代わりに、空中に飛び立たせ機体を振ることで<返信>。それを確認した母親は、明らかにホッとした表情になっていたのだった。
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