上 下
1,035 / 2,387
第三世代

閑話休題 「ロボットの強み」

しおりを挟む
新暦〇〇三三年三月十四日。



こうしてルコアの受け入れ態勢が整えられた一方で、俺達の日常は淡々と続いている。

アリニドラニ村に居付いた斗真とうまも、ドラニが鉄を打ち鍛えて<はがね>にしていく様子を熱心に見て、自分でも<やっとこ>を使って鉄のインゴットを掴んで、それにハンマーをふるってと、真似をし始めている。

もちろん、鉄が真っ赤になるまで焼いた上でないと上手くはいかないが、動作を真似るにはそれでいいと思う。人間のように『言葉で教える』というのができないからな。

暮らしぶりも、アリニとドラニを<仲間>としたそれがすっかり板について、ずっと昔からそうしてきたみたいに、落ち着いてる。

斗真とうまの場合は、自ら望んでアリニドラニ村に飛び込んできた。しかもルプシアンのままで。彼とルコアとではまったく事情が違う。アリニとドラニに任せておけば大丈夫だろう。

それでも、やはり時間はかかる。だったらルコアについても時間はかかって当然だ。

今は、ビアンカと一緒に落ち着いて食事ができるようになった。これだけでも上等だよ。

だが、食事の後にやっと安心できたのかウトウトし始めたので寝かせたら、

「あ~っ! うああ~っ!!」

と突然、声を上げたりもした。俺は音声だけだが、それでも『悪夢にうなされたんだな』と分かるそれだった。

「大丈夫。私はここにいますよ。もう安全ですよ」

ビアンカがそう声を掛けつつルコアを撫でてくれてるのが、目に見えるようだ。

本当に親身になってくれている。彼女がいてくれてすごく助かってる。

そのビアンカをサポートするために、セシリアが、自身のメンテナンスも兼ねてイレーネと共にコーネリアス号に向けて出発した。

ルコアのような、大きな不安を抱えた子供と接するという点ではまだまだノウハウが十分でないモニカだけでは対処しきれないこともあるかもしれないからな。

実際、悪夢にうなされた彼女に対処したのはビアンカだ。

もちろん、人間が対処できる範囲であれば人間がすればいいものの、今後、同じような形で人数が増えてくれば、確実に適切な対応ができる人員を確保するのは難しくなってくるだろう。人間は、どうしても能力において個人差が大きい。ビアンカにできることが必ずしもできるとは限らない。

それに比べれば、ロボットは、データをコピーすることで、機体の性能に依存するようなものでない限り、ほぼ同じことができるようになる。

これも、ロボットの強みだ。

そしてまさにそのためにアリスシリーズを作ることにしたんだからな。

残念ながら新たに作ったAIの性能がそれこそせいぜい二十五世紀頃相当のものでしかないことで、メイトギアが蓄積した膨大なデータをそのまま引き継げないのはアレだが、この惑星にできる<人間社会>そのものが、これまでにないものになるんだから、データも新たに蓄積していく方がむしろ確実だろう。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

精霊のお仕事

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:78pt お気に入り:123

転移したらダンジョンの下層だった

Gai
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:4,487pt お気に入り:4,653

悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:13,738pt お気に入り:6,020

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,094pt お気に入り:281

追放の破戒僧は女難から逃げられない

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:633pt お気に入り:167

冒険がしたい創造スキル持ちの転生者

Gai
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:5,090pt お気に入り:9,008

異世界転移で生産と魔法チートで誰にも縛られず自由に暮らします!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:234pt お気に入り:2,452

処理中です...