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第三世代

ルコア編 それだけの話

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まどかひなたも、時々は我儘も言うが、そんなにひどいダダをこねることはなかった。それはたぶん、母親のひかりがたっぷりと構ってくれているからだろう。だから、<調査の仕事>については、休んでもらってる。ひなたが、自分で自分のことをほとんどできるようになるまでは、徹底的に二人の相手に集中してもらうことにしたんだ。

そうして満足するまで構ってもらえているから、酷い我儘を言う必要がないんだ。加えて、俺もシモーヌもひかりも、<できない約束>はしないように心掛けている。『また後で』と言えば実際に後で遊ぶし、万難を排して約束は履行するようにしてるんだ。

それでも、もし、果たせない時には、ちゃんと誠心誠意謝罪する。相手が子供だからと軽く見ない。『子供は親の言うことを聞いておけばいいんだ!』みたいな態度は取らない。

親が、子供を、ちゃんと人間として接するようにしないと、子供だって<人間との接し方>を学べないだろう? 

コミュニケーション能力に難がある人間の多くは、結局、親との関係に問題があったケースが多いらしい。

結局、そういうことなんだと俺は思う。

口先でいくら綺麗事を並べたところで、普段の行動が伴ってなければその言葉に意味はない。説得力はない。上辺だけの<教育>は、子供に届かない。

仕事だってそのはずだ。上辺の理念だけのプレゼンが通るか? 相手を納得させられるか? もしそれが通ったとしたら、そんな相手は信頼に足るまっとうな存在か?

人間の子供は、<人間以外の動物>じゃない。小さくたって未熟だって拙くたって<人間>なんだ。人間として扱わないで、人間として接しないで、どうして子供が<人間としての在り方>を学べると思うんだ?

子供が人間を人間として扱わないような者になったのなら、それは親が子供を人間として扱ってなかったということじゃないのか?

親の口先だけの言葉は、子供には通じないぞ。いくら綺麗事を並べたって、親の普段の言動や振る舞いがそれを体現していなければ、子供だって真に受けちゃくれない。

一見すると立派な人物にも見えるような親の子が<ロクデナシ>だったりすることがあるのは、結局、親が子供に対して<人間としての接し方>をしてこなかったからだというのも、メイトギアが蓄えたデータでも明らからしい。

他人の目から見た自分の体裁ばかり気にしているだけの親の言葉は、子供には届かないということだ。

だから俺は、あの<サーペンティアンの少女>が人間としての心を持つならば、その姿形には関係なく人間として扱う。シモーヌやじゅんやビアンカやまどかれいに対してもやってきたことだ。

それだけの話なんだ。

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