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第三世代

ルコア編 幸せを掴むチャンス

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まったく、改めて思う。ここに遭難した当初からはまったく想像もしなかった毎日だな。と。

だが、そもそも<人生>ってもの自体がそういうものなんだろう。

『一寸先は闇』

とはよく言われるが、逆に、思いもかけない幸せが巡ってることもある。

もっとも、<幸せ>を掴むには、それを呼び寄せるような生き方をする必要があるんだろうが。

正直、妹が、光莉ひかりが亡くなった頃の俺の生き方は、ただ坂道を転がり落ちるように不幸になっていくようなそれだったように思う。自暴自棄になって、その場の思いつきでヤバいところから借金までして、破滅一直線を絵に描いたようなものだった。

ただ、そういう破滅一直線な道の中にも、実は<幸せになるきっかけ>というものは間違いなくあるんだろう。

俺の場合は、エレクシアだった。彼女と共に人間社会に距離を置いて、宇宙を渡り歩いて、落ち着いて考える時間を得て、自分自身を見詰めなおす機会を得たんだ。

それでも、法定金利で計算しなおせば、利息分を抜きにしても元金を遥かに上回る額をすでに支払ってきていることに改めて気付いて、何もかもがもうどうでもよくなって<夢色星団>に挑んで。ってして再び破滅への道を選んだ。

にも拘らず、今では普通に幸せなんだ。重ねて選んだはずの破滅への道の中にも、やっぱり<幸せになるきっかけ>は転がってた。

大きな不幸の中でも、幸せは掴める。

その事実を、俺は、身をもって確かめた。だからシモーヌも、ビアンカも、久利生くりうも、幸せになれた。ひかりあかりもそうだし、まどかひなたも幸せそうだ。

そして俺も、大きな責任を負いつつも、それを『大変だ』と感じつつも、曾孫達以降については見守るだけと自分に言い聞かせなきゃいけない状態になっても、それを『苦しい』と思いつつも、やっぱり<幸せ>なんだ。

たぶんそれは、

『これが生きるということ』

だって、俺自身が実感できているからだろうな。

<生>と<死>は一続きで繋がっていて、その中で懸命に生きることができれば、ある種の<納得>も得られて、ただ単に、

『死という不幸な結末を嘆き恐れる』

だけの生を送らずに済んでいるということなんだと思うんだ。

だからあのサーペンティアンの少女にだって、幸せを掴むチャンスはある。今回は保護が遅れてしまって申し訳ないという気持ちがあるからこそ、なお一層、ここからは丁寧に対処させてもらおう。あらゆる可能性は想定しつつも。

ひかりじゅんと一緒にまどかひなたの相手をしながらも、俺は、そう心に決めていた。

するとそこに、

「分析結果が届いたよ」

シモーヌの声。

「ああ、分かった」

と応えつつ、まどかひなたに向き直り、

「じゃあまた、後でな」

二人の頭を両手で撫でて席に戻ったのだった。

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