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第三世代

按編 普通

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グレイと共にコーネリアス号に辿り着いたビアンカは、いつもならそうかい達にも挨拶するところだが、さすがに今日はそれどころじゃなかったのですぐさま反対側に回り、りん達の<縄張り>に入る。

すると、

あん…?」

いつもは挨拶はするものの出迎えるようなことはしないあんが、ビアンカとグレイの前に立っていた。

しかも、耳をピクピクと動かしたかと思うと踵を返し、歩き始める。

あの<サーペンティアンの少女>がいる方向に向かって。

まさか、案内しようとしてくれてるのか……?

それが事実かどうかは分からないものの、少なくとも邪魔をしようとしてるわけじゃないのは確かなので、ビアンカはそのままあんについて行った。

そして……

「目標を確認。保護します」

本当なら、もっと早くこうするべきだったと思う。そうしていれば<彼女>をそんな不安の中に置いておくこともなかった。

ただ、<言い訳>にしかならないものの、どうしてもみずちのイメージが強すぎたから、つい、そっちに引っ張られてしまったんだ。みずちのことは別にしても、見た目は<少女>であろうと、ここではまったくもって油断はできないし。

ようだって、見た目こそはこのサーペンティアンの少女とそう変わらない感じなのに、凶暴さは半端じゃなかったからな。

でも、それでも、申し訳ないという気持ちが先に立ってしまう。

蜘蛛のようにも見える部分を除けば、普通に服を着た人間にも見える。と言うか、

<何か大きな虫みたいな生き物に乗った人間>

に見えるビアンカが近付いた途端に、

「助けて……!」

ってその<少女>が言ったんだ。

あの<不定形生物>の中で生まれ育ったんだとしたら、ロボットすらきっと見たことはなかっただろう。その子にとってはドーベルマンDK-aでさえ、人間を連想させるものじゃなかったはずだ。

植物に覆われて遠目には人工物には見えなくても、少女がいた距離からならコーネリアス号が明らかに人工物だと分かるものの、それすら、

『そういう人工物を見たことがある』

人間でなければピンと来ないかもしれない。

少女にとってここは、

<人間のようにも見えるものの意思疎通もできない得体のしれない生き物が住む世界>

だったんだろうな。だから助けを求めることもできなかった。

だけどそこにようやく、<服を着た人間>が現れたんだ。

それでやっと助けを求めることができた。

元々の自分としての記憶があるかどうかは、今はまだ分からない。

だが、少なくとも、人間(地球人)の言葉を話すことはできる程度の<人間性>は備えてる。

となればビアンカも……

「大丈夫。もう大丈夫だから。私もあなたと『同じ』だから。何も心配しなくていいよ。ここではあなただって<普通>だから」

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