1,011 / 2,387
第三世代
按編 ラミア
しおりを挟む
蛟はクラレスの姿をしていたし、それ以前にも、シモーヌの姿をした<グンタイ竜の女王>などもいて、さらにはビアンカの例からすると、コーネリアス号の乗員の遺伝子が顕在化することもあるものの、他にもここの<獣人>達も捕食というか同化というか吸収というかして取り込んでいるのは確認されているから、そちらがベースになる可能性ももちろん十分に考えられる。
となると、今回のそれは<獣人ベースの個体>ということだろうか。
ただ、赤外線映像では透明かどうかが分からない。だから、
「カメラを通常モードに切り替え、感度を上げてくれ」
と指示を出す。
すると、月明かりの下でもまるで昼間のような映像になった。そして草むらに潜む、透明な体を持つ<ヒト蛇>の姿がはっきりと確認できる。人間部分のパッと見の印象は、十一~十二歳くらいの少女、か。
「やっぱり……」
シモーヌが呟く。
しかし、そのヒト蛇は、いきなり襲い掛かってくるような気配はなかった。蛟は異常なほどの攻撃性を見せて、獲物と見れば容赦なく襲い掛かってきたというのに。
「腹は、減ってないのか?」
などと思ってしまうものの、草むらの中から按と伍号機に向けられた視線は……
「怯え……か?」
そうだ。蛟の場合は、たとえ死の直前になっても決して見せることのなかった<怖がってる表情>を、そのヒト蛇はしていたんだ。
そこからは強い攻撃性や敵意は見えない。
<見知らぬ場所に一人で放り出されて不安で仕方ない少女>
としか思えない表情で、按と伍号機を見ていた。
おそらく、だから按もすぐには気付かなかったんだ。敵意や害意を向けられていないから。
しばらくその状態で見詰め合った後、按がすっとヒト蛇の方に一歩踏み出した。
と同時に、ヒト蛇の方はスッと下がる。完全に按が優位だ。
伍号機を恐れない按にとっては、敵意や害意を向けてこない相手はそれほど恐れる対象でもないのかもしれない。
けれどさすがにそれ以上は近付くことはなかった。自分にとって危険かどうかを確かめただけなのかもな。
そうしてふいと視線を逸らして、ヒト蛇がいた草むらからは離れるように歩き出す。伍号機もそれに続く。
その時も、ヒト蛇はビクッと体を緊張させた。
姿こそ似ているものの、その気性は蛟とはまるっきり正反対といった感じだ。
「今すぐ危険がある感じじゃないが、だからって放っておいていいとも思えないし、しばらく監視を続けよう」
「そうね。それがいいと思う」
そんなわけで新しく現れたヒト蛇の監視もすることにしたんだが、これが本当に、
<ヒト蛇の姿をしているただの子供>
という感じで、自分では獲物を捕らえることもできなかったのだった。
となると、今回のそれは<獣人ベースの個体>ということだろうか。
ただ、赤外線映像では透明かどうかが分からない。だから、
「カメラを通常モードに切り替え、感度を上げてくれ」
と指示を出す。
すると、月明かりの下でもまるで昼間のような映像になった。そして草むらに潜む、透明な体を持つ<ヒト蛇>の姿がはっきりと確認できる。人間部分のパッと見の印象は、十一~十二歳くらいの少女、か。
「やっぱり……」
シモーヌが呟く。
しかし、そのヒト蛇は、いきなり襲い掛かってくるような気配はなかった。蛟は異常なほどの攻撃性を見せて、獲物と見れば容赦なく襲い掛かってきたというのに。
「腹は、減ってないのか?」
などと思ってしまうものの、草むらの中から按と伍号機に向けられた視線は……
「怯え……か?」
そうだ。蛟の場合は、たとえ死の直前になっても決して見せることのなかった<怖がってる表情>を、そのヒト蛇はしていたんだ。
そこからは強い攻撃性や敵意は見えない。
<見知らぬ場所に一人で放り出されて不安で仕方ない少女>
としか思えない表情で、按と伍号機を見ていた。
おそらく、だから按もすぐには気付かなかったんだ。敵意や害意を向けられていないから。
しばらくその状態で見詰め合った後、按がすっとヒト蛇の方に一歩踏み出した。
と同時に、ヒト蛇の方はスッと下がる。完全に按が優位だ。
伍号機を恐れない按にとっては、敵意や害意を向けてこない相手はそれほど恐れる対象でもないのかもしれない。
けれどさすがにそれ以上は近付くことはなかった。自分にとって危険かどうかを確かめただけなのかもな。
そうしてふいと視線を逸らして、ヒト蛇がいた草むらからは離れるように歩き出す。伍号機もそれに続く。
その時も、ヒト蛇はビクッと体を緊張させた。
姿こそ似ているものの、その気性は蛟とはまるっきり正反対といった感じだ。
「今すぐ危険がある感じじゃないが、だからって放っておいていいとも思えないし、しばらく監視を続けよう」
「そうね。それがいいと思う」
そんなわけで新しく現れたヒト蛇の監視もすることにしたんだが、これが本当に、
<ヒト蛇の姿をしているただの子供>
という感じで、自分では獲物を捕らえることもできなかったのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
163
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる