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第三世代

按編 例外的な存在

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狩りを成功させ、命を貪り、あんは自分の命を今日も繋ぐ。ただしそれは、明日はどうなるか分からない。そういう世界。

そんな中で、俺達は生きていく。

でも今は取り敢えず、あんのことだな。

<彼女>とも<彼>とも言えないあんだが、俺はまるっきりそのまま受け止めてる。あんあんだ。それ以外の何者でもない。

そして、りん達も、そんなことは気にしていない。あんが、ちゃんと狩りに参加して群れの一員として働けてるからだろうな。

子供ができるかどうかは、あくまで繁殖の時だけの話だ。しかも雌として雄として魅力があるかどうかは、パートナーとして選ばれるかどうかの話でしかない。

これまで様子を見てきたところ、あんは、性別が確定していないからか、性的な面での明確な反応を見せてこなかった。性に目覚めているのに自分がどちらでもないとなれば気にするかもしれないが、そもそも本人が性的なことについて目覚めていないのだから、当然、気にすることもない。

人間(地球人)でも、幼児の間はあまり気にしないよな。それと同じだという印象がある。

人間(地球人)はとにかく型に嵌めて理解を楽にしたがる傾向があるが、自然というものは、実はこういうものなんだろうな。大きな類型に当てはまらない個体も、数は少ないとしても普通に生まれてくる。その中で適応できるものが生き延びるわけだ。

が、子供を残せない事例についてはそのまま消えていくわけだが、<子供を残せない個体>自体がこれまた実は珍しくないんだから、成り行きに任せればいいんだよ。

あんが気にしてないのなら、わざわざ気にさせる必要もない。

そういう意味でも、あんがドーベルマンDK-a号機に強く懐いたことは、むしろ都合がよかった。これで子供ができなくても、それは<あんの所為>ってことにならないしな。

だからこれでいいと思う。

ちなみにあんは、以前は号機のために獲物の一部を運んだりしてくれてたが、さすがに今では号機がそれを食べないことを悟ってか、届けたりすることはなくなった。

それも、あんにとっては不思議だったものの、『そういうものだ』として受け止めているようだ。

結局、人間(地球人)が類型に当てはめようとしすぎて考えすぎているんだよ。実際には自然の方がそういう部分は大らかだ。気にするものもいるものの、気にしないものもそれなりにいる。

だからこそ、異種族である人間に求愛してきたり、生物ですらない自動車とかに求愛してきたりするのがいるんだろう。

もちろんそういうのは例外的な存在でも、そういう例外的なものが存在すること自体が<自然>なんだと改めて思うよ。

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