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第三世代

按編 悲観することでもない

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雌でも雄でもなく生まれたあんだったが、俺は別にそれを悲観してもいなかった。

なにしろ、野生では子孫を残そうと努力するのが<普通>とはいえ、実際には子を残せないまま命を終える者だって別に珍しくない。めいに迫ってかくに食われたさくだって、たぶん、子供を残せてない。少なくとも、俺達が確認できた限りでは子供がいた気配がない。

つまり、

『子供を残せないこと自体、珍しいことじゃない』

んだ。

『子供を残せないのはおかしい』

なんて考えが一部には残ってる人間(地球人)の方がむしろおかしいんだと、俺は感じてる。

だからあんが子供を残せなくたって、そんなに悲観することでもないと思うんだよ。

そもそも、当のあん自身が、そっち方面の興味がまったくないらしい。ある意味では、ドーベルマンDK-a号機に対して<恋>をしているのかとも思ったが、必ずしもそういうのでもないようだ。

『犬好きの人間が犬を前にするとデレデレになる』

というそれに近いのかもしれないという印象だ。

そんなわけで、俺としてはただ見守るだけにしている。

実際、あんは、家族との仲もよく、辛そうにもしていない。

子供を残したいというのは自然な欲求ではあるものの、だからといって人間のように子供ができないことを作らないことを見下したり揶揄したりという感性自体がレオンにはないんだ。

だとしたらこのままで何の問題がある? 

万が一、何か問題が生じるなら、俺達の集落に来てくれればいい。

と言うか、いっそ、号機と二人きり(?)で、独立した<群れ>を作ってもいいんじゃないかな。

それならそれでこっちも用意をするし。

なんていう俺の考えも現実味を帯びてきた気はするな。

ドーベルマンMPMの製造も順調で、コーネリアス号を中心にしていくつもの<畑>を作り、

がくのように人間に対して執着を見せる存在に向けたデコイとしての偽の集落>

を次々と展開している。

その内側であれば、あんの命が尽きるまでの間くらい、穏やかに暮らしていけるだろう。









新暦〇〇三十三年三月八日。



その日も、あん号機と共に過ごしていた。まだ十分にりん達の姿が見える場所ではありつつ、家族のところでは寛がない。

あんが涼めるようにと、ドーベルマンDK-aじゅう号機に届けてもらった資材で組み上げた簡易の<日除け>の下で、気持ちよさそうに寝ている。

それでいて、夜は、りん達と一緒に狩りをするんだ。

母親であるりんも、そんなあんのことはもう割り切ってるらしく、とやかく言うこともしない。

俺の下で育ったことも影響してるんだろうな。

だいたい、りんだって、以前はあらたと番ったりしてたんだ。あんのことを言えた義理じゃないもんな。

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