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第三世代
晴編 逡巡
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晴の戦いぶりは実に見事だった。
腹に頭突きを受けて頭が下がったところに下から突き上げるような全力の頭突き。人間なら顎の骨は砕けて下手をすると頚骨まで折れていたかもしれない一撃。
しかし、さすがに相手もマンティアン。一瞬、意識が飛んだようにも見えたがすぐに回復。左のカマで晴の首をがっちりと捉えていた。
「ギ…ッ!?」
晴がそれを外そうともがくが、無駄だった。そして相手のマンティアンはさらに右のカマで晴の左肩をがっちりと掴む。
『マズい……っ!』
俺の背筋に冷たいものが奔り抜けた。晴の攻撃は、二度目の頭突きで決めてしまうつもりのものだった。それが決まりきらなかったのだ。となると、形勢は一気に逆転。正直、この時点で晴にできることはなくなっていただろう。
「あ……っ!」
ドローンによる援護を差し向けるか。
それともマンティアンであれば当然の結末をこのまま受け入れるか。
俺の頭の中ではすぐには結論が出せなかった。
だが、そんな俺の見ているタブレットの画面の中に、何かが。
「角……っ!?」
角だった。離れたところで見守っていたはずの角がいつの間にか駆け寄ってきて、割り込んだのである。
晴を抑えつけようとして上から覆い被さっていた若いマンティアンの頭に、容赦のない蹴りが。
「な……っ!?」
若いマンティアンの頭が吹っ飛んだと見紛うばかりのそれに、俺は言葉も出せなかった。
がっちりと首と肩を掴まれていた晴ごと、地面を転がる。
さらに角は、間髪を入れずに地面に倒れた若いマンティアンの頭にサッカーボールキック。晴を掴んでいたカマも外れて、ぐるんと体が回転。人間同士の喧嘩であってもこれはヤバいやつだ。完全に殺しにかかっている。まあ、マンティアンなんだから当然と言えば当然なんだが。
なのに、相手もさすがと言うべきか。人間ならこの時点で意識が断たれていてもおかしくないところを、ザッと地面に両手両足をついて、角のさらなる蹴りを横っ飛びで躱した。
こいつ、タフだな。晴の全力の頭突きを顎に食らって、その上で角の蹴りを二発もモロに頭に受けてまだ動けるか。
とは言え、まったくノーダメージというわけではないようだ。
乱入してきたベテランマンティアンが相手では自分が不利だと判断したんだろう。全力での逃走に切り替えたらしい。賢明な選択だな。
一瞬で姿が見えなくなった若いマンティアンを追うことはなく、角は、体を起こして自分を見た晴を一瞥しただけで、声を掛けるでもなく労うでもなく、悠然とその場から立ち去ってしまった。
「……」
遠ざかっていく大きな背中を、晴が黙って見送っていたのだった。
腹に頭突きを受けて頭が下がったところに下から突き上げるような全力の頭突き。人間なら顎の骨は砕けて下手をすると頚骨まで折れていたかもしれない一撃。
しかし、さすがに相手もマンティアン。一瞬、意識が飛んだようにも見えたがすぐに回復。左のカマで晴の首をがっちりと捉えていた。
「ギ…ッ!?」
晴がそれを外そうともがくが、無駄だった。そして相手のマンティアンはさらに右のカマで晴の左肩をがっちりと掴む。
『マズい……っ!』
俺の背筋に冷たいものが奔り抜けた。晴の攻撃は、二度目の頭突きで決めてしまうつもりのものだった。それが決まりきらなかったのだ。となると、形勢は一気に逆転。正直、この時点で晴にできることはなくなっていただろう。
「あ……っ!」
ドローンによる援護を差し向けるか。
それともマンティアンであれば当然の結末をこのまま受け入れるか。
俺の頭の中ではすぐには結論が出せなかった。
だが、そんな俺の見ているタブレットの画面の中に、何かが。
「角……っ!?」
角だった。離れたところで見守っていたはずの角がいつの間にか駆け寄ってきて、割り込んだのである。
晴を抑えつけようとして上から覆い被さっていた若いマンティアンの頭に、容赦のない蹴りが。
「な……っ!?」
若いマンティアンの頭が吹っ飛んだと見紛うばかりのそれに、俺は言葉も出せなかった。
がっちりと首と肩を掴まれていた晴ごと、地面を転がる。
さらに角は、間髪を入れずに地面に倒れた若いマンティアンの頭にサッカーボールキック。晴を掴んでいたカマも外れて、ぐるんと体が回転。人間同士の喧嘩であってもこれはヤバいやつだ。完全に殺しにかかっている。まあ、マンティアンなんだから当然と言えば当然なんだが。
なのに、相手もさすがと言うべきか。人間ならこの時点で意識が断たれていてもおかしくないところを、ザッと地面に両手両足をついて、角のさらなる蹴りを横っ飛びで躱した。
こいつ、タフだな。晴の全力の頭突きを顎に食らって、その上で角の蹴りを二発もモロに頭に受けてまだ動けるか。
とは言え、まったくノーダメージというわけではないようだ。
乱入してきたベテランマンティアンが相手では自分が不利だと判断したんだろう。全力での逃走に切り替えたらしい。賢明な選択だな。
一瞬で姿が見えなくなった若いマンティアンを追うことはなく、角は、体を起こして自分を見た晴を一瞥しただけで、声を掛けるでもなく労うでもなく、悠然とその場から立ち去ってしまった。
「……」
遠ざかっていく大きな背中を、晴が黙って見送っていたのだった。
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