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第三世代

アリニドラニ村編 育児

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『自分以外の誰かのことを<自分とは違う存在>として敬うことをよしとする社会を目指したい』

とは言うものの、それが本当に実現できるかどうかは、正直、分からない。

それを目指して努力はしたいけどな。

だからって強引に押し付けて、俺の考えに合わない者を排除しようとすればそれはただの<独裁>だ。そして独裁が数百年と続いたことは、ない。

独裁者はだいたい自分の血縁者に権力を引き継がせたがるらしいが、たとえ優秀な独裁者がいたとしても、その息子や孫が優れた人物である保証はまったくないし、だいたい、それで失敗して瓦解するというのがオチだという。

ゆえに俺は、<独裁者>にはならない。

<民主主義>が完璧な制度だなどと言うつもりもないが、衆愚政治になる危険性は常にはらみつつ、極端に走ろうとする為政者を抑えることができるのも結局は民主主義なんだろう。

だから肝は、<衆愚>にならないようにすることなんだろうな。

俺は、基本的に、

<平等>

<権利>

<自由>

という言葉が嫌いだ。だからこれまでにもあまり頻繁には使わないようにしてきたつもりではある。

<平等>なんてものはたぶん存在しないし、

<権利>を無闇に主張する人間は、自分が主張する権利と同じものを他人も持っているということを考えようとしない傾向があるし、

<自由>には実は<責任>がついて回るということを考えない人間も少なくない実感がある。

どうしてそうなるのか?ということを考えると、結局、

『親が自分の子供にそれをちゃんと教えてないからだろうなあ……』

という実感しかないんだ。

世の中には、いまだに、

『仕事と子育てのどちらが大変か?』

みたいなことを言ってるのがいるらしいが、今の俺の実感としては、

『そんなことを言ってる奴は、自分の親を尊敬してないだろう?』

ってことだな。

だってそうだろう?

『仕事の方が大変だ!』

なんて、自分の母親を尊敬してたら言えないだろうし、

『育児の方が大変だ!』

なんてのは、自分の父親を尊敬してたら言えないんじゃないのか?

こう言うと、まあ、

『育児は母親の役目で、父親だけが外で仕事をするのか!?』

みたいなことを言いだすのもいるだろうが、ここは別にそういう話をしたいわけじゃないので敢えて横に置かせてもらう。

言いたいのは、

『どっちが大変かなんて考えるのがそもそもナンセンス』

って話だよ。

『育児なんて、どうせ子供がある程度の年齢になったら終わりなんだから、楽なもんだ』

とか考えてるのがいるとしたら、それは育児というものを舐めすぎだと俺は思う。

それで育児が終わるのなら、どうして、<平等>や<権利>や<自由>といったものを軽く考えてるのがいるんだ? その辺りのことを、子供がしっかりと理解するまで確実に教えてないのがいるからじゃないのか? それを教えもしないうちに『終わった』といって放り出したのがいるってことじゃないのか?

その手間を掛けてない事例を挙げて、

『育児なんてこの程度』

とか言っているのなら、明らかな悪意を感じるぞ?

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