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第三世代

保編 すれ違い

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しかしそうやって優しい一面があるのと同時に、けっこうシビアな面もあって、彼女に餌を分けてもらってて、でも成体になってもやっぱり非力なままで雌にモテない雄が彼女に言い寄っても、相手にもしなかったんだ。

と言うか、そうやって言い寄ってくる雄の方も、散々、みどりに世話になっておきながら、成体になってからは他の雌にアピールして、それで相手にされないからって『仕方ない』とばかりにみどりで妥協しようとか、お祖父ちゃん、そんな男は認めないぞ!?

人間でなら本当に『ふざけるな!』とも言われかねない話だな。

とは言え、野生ではやっぱりなるべく優れた相手と番って優れた子を残したいというのは当然のことであって、だからシビアになるのも当然なんだろうと思う。それに対して人間があれこれ言うのがむしろおかしいだけなんだと自分に言い聞かせる。

それで言えば、みどりすばるの組み合わせは、俺個人としては悪くないと思うんだ。

確かに、兄であるたもつや父親であるほまれとは違うタイプかもしれない。

だけどすばるも決して悪い奴じゃない。

群れに加わったばかりの頃はただの乱暴者だったかもしれないが、自分より弱い相手に横暴に振舞うわけでも、誰かをイジメるワケでもない。とどろきの成長ぶりを見ても、将来性はあるんじゃないかな。

だから、たもつすばるになら任せてもいいと思うぞ。







新暦〇〇三十一年三月三十日。



などと俺は思うものの、当のたもつにしてみると複雑な気分なのは変わらないだろうな。

で、その日は、たもつが先に哨戒から帰ってきて、早速、みどりが毛繕いしてやっていた。

そしてそろそろ終わりかけかなというところにすばるが帰ってくると、

「みゃっ!」

と、『どこから声を出してるんだ?』というような声を上げて、みどりすばるの方へと駆け寄っていった。

「……」

するとすばるは、迷惑そうな表情になりながらも、集めてきた果実の一つをみどりにまず手渡し、残りは寄ってきた雌や子供達に奪われるままに。

それから、果実を受け取った他の雌や子供達が潮が引くようにいなくなると、みどりは、すばるの後ろに座って、受け取った果実は足で掴んでしっかりとキープしつつも、手馴れた様子ですばるの毛繕いを始めた。

もうすっかり普通に仲のいいカップルという感じだ。

そんな二人を、たもつが複雑そうな表情で見てる。

しかも、だいたい終わったところで、すばるが、

『もういいだろ!』

的な感じで逃げるようにその場を離れたから、みどりが仕方なくたもつのところに戻って毛繕いの続きをしようとすると、

「うあっ!」

たもつが明らかに苛立った感じで声を上げて、みどりを振り払ってやっぱりその場を離れた。

いかんなあ。<すれ違い>が起こってるぞ。

みどりたもつの毛繕いの途中ですばるのところに行くし、たもつはそんなみどりの態度に苛立ったからってマズい振る舞いだし、これは実によくないですな。

<大きな器>を持っているようにも見えるたもつだったが、やはり完璧というわけじゃない。こういう、自分の感情を上手く制御できない一面もある。

でもまあ、こういうのは人間でもちっとも珍しくないけどな。

誰しも、<残念な部分>というのは持ってるもんだ。

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