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第三世代

保編 非モテ

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茉穂まほがそうしてたもつへの想いを引きずっている一方で、みどりの方はと言うと、<お兄ちゃん>一筋でこれといって目立ったエピソードはなかった気がする。

言い換えればそれはすごく平穏だったということでもあるから本来は喜ばしいはずなんだけどな。

ただ、ここまででみどりの印象がどうにも悪い気がするから、彼女についても詳しく触れてあげようと思う。

何度も言うようにみどりたもつのことが大好きで、いつも彼の後ろをついて回ってた。

そういう部分も含めて幼稚に見えるのか、基本的に雄からの人気はあまりない。加えて、茉穂まほと同じで『おとなしい』というのがマイナス要因になっているのか。

人間の場合、『おとなしい』というのはえてして、

<自分の言いなりになる女を探してる悪い男>

に目を付けられたりするものの、パパニアンの場合は単純に、

モテない。

という話に落ち着くようだ。

その点、たもつみどりのことを<雌>として見てないから逆に気にならないんだろう。

それでいて、やっぱり茉穂まほと同じく言い寄る雄がまったくいないわけでもない。

他の雌に相手にされない<非モテの雄>が、最後の砦とばかりにアプローチを仕掛けて来るんだが、みどりは全然見向きもしなかった。この点でも茉穂まほと同じか。

ただちょっと、茉穂まほに比べればたもつに対して積極的なだけで。

そんなわけでモテないみどりだったものの、本人は気にもしていなかったようだ。たもつさえいればそれでよかったんだろうな。

しかし同時に、小さい子に対しては優しい一面もある。

子供の頃からそうだった。

俺達のところに遊びに来てる時も、レッド達を怖がって美味そうに熟してる果実があるのに取りに行けない子がいると代わりに取ってやったりしてたんだ。

みどりは、たもつのようにレッド達と遊ぶことまではしないものの、普通のパパニアンほどは恐れてなかったからな。彼女にしてみればお安い御用って感じか。

そして成体おとなになってからも、小さい子や弱い相手には優しかった。

ほまれの群れでははっきり<イジメ>と断定できるようなひどいものはなかったにせよ、やっぱり力のない個体は他よりどうしても出遅れることが多く、餌にありつける順番は後になりがちだった。美味しく実ったものは取れず、いつも残り物ばかり。

みどりも決してぐいぐい前に出るタイプではなかったが、それでも割と要領がいいからかちゃんと確保してたし、さらにはたもつが彼女のために取ってくれたりで、それを分け与えてあげたりしてたんだ。

そうしてみどりから餌を分けてもらっていた子も今では立派になってたりもする。もちろん、非力なままのもいるが。

まあ、立派になれたのがいたなら、群れにとってもプラスになってるんだろう。

ボスのほまれも、それも見越してか、彼女のすることには口出ししてなかったな。

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