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第三世代

保編 昴

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みどりの危機を救った形になったすばるは、そのまま<余所者の雄>と対峙した。

とどろきをはじめとしたボス候補の雄達とほまれは、雌や子供達を庇うように位置取りして、見守る。

それがほまれの群れでの<ルール>だった。

『一対一の勝負は、どちらかが逃げ出すまで見守る』

という。

実はこの辺り、群れによっても違うようだ。群れによっては何人もの雄で一度に襲い掛かって袋叩きにすることもあるらしい。

そういう方式も、別に非難されることじゃないだろう。それを採用しているところではあくまで群れの内部でのみボス争いをしているだけで。

余所から来ていきなりボスに挑むのではなく、

『まずは群れに加わって下積みを経てボスに挑むのが筋』

って考えてる感じだろうか。

だから、いきなりボスに挑もうとしてる雄は、有力な群れの雄が見張りや哨戒に出て留守になっているタイミングを狙ったりもする。そういう駆け引きも込みで<ボスの資質>が問われるんだろうな。

が、今回の雄は、よほど腕に自信があるんだろう。実質的にはナンバー2とも言えるとどろきがいる時に挑んできたんだわけで。

もしくは、何も考えてないか?

それがどちらにせよ、とにかくすばるが相手ということだな。

「がああっ!」

歯を剥き出しにして威嚇するすばるに、余所者の雄も歯を剥き出してはいるもののことさら威嚇する感じでもない。ないが、それでもかなりの威圧感はある。

その様子を、メイフェアのカメラが捉えていた。

彼女としてはほまれが最も優先すべき警護対象で、次いでほまれの嫁や子供達、それ以外は『可能であれば守る』という優先順位で対応してるので、今のところは完全に静観の構えだ。

それよりも、この騒ぎに乗じて他の外敵が近付いたりしないかを監視している。

そんな中、すばるは余所者の雄に飛び掛かった。

すばるも腕っぷしには自信のあるタイプだ。実際、単純なフィジカルの強さで言えばたぶん、すでに肉体的なピークは過ぎてると言っても過言じゃないほまれにもそんなに大きくは劣らない。

ほまれは非常に高い知能を活かした<巧者>としての戦い方を身上にしている。エレクシアから学んだ体術を巧みに活かし、フィジカルの不利を補うんだ。だから単純な力自慢が相手だと、今でも十分に圧倒する。

もちろんそれも、基礎的なフィジカルの強さがあってのことなので、この先、さらに肉体的に劣ってくれば、<技>そのもののキレも落ちてくるだろう。そうなればいよいよボスの座を譲る時期ということになるだろうな。

と、それは余談として、飛び掛かってきたすばるを、余所者の雄は、腕一本で払い除けた。

これは……相当な強敵だぞ。

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