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第三世代

保編 保

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たもつは、パパニアンであるほまれあおの息子で、第一子でもある。

これからしばらくの間、時間をさかのぼり、たもつほまれの群れを巣立つまでのことを語っていきたいと思う。







新暦〇〇三十一年三月十五日。



パパニアンの雄は、基本的に五歳から十歳までの間くらいに生まれた群れを巣立って別の群れに合流することが多いんだが、だからと言って全ての雄がそうかと言うと、実は必ずしもそうじゃないらしい。

中にはそのまま生まれた群れに居座る雄もいるようだ。

たもつもそうだった。

もう実年齢で二十歳を超えた(老化抑制処置を受けてなかった頃の人間で言うと三十代半ばくらい?)というのに、ほまれの群れに残ってたんだ。ほまれも特段、たもつを追い出そうとはしなかった。たもつに限らず、他の子もだ。

それが果たして好ましいことなのかどうかは、解釈が分かれるところだろう。

『厳しくするべきだ!』

という意見もあるとは思う。

しかし、それぞれの選択が吉と出るか凶と出るかは、結果が出てみないと結局は分からない。そして、ほまれの選択がよくない結果を招いたとしても、これはほまれ自身の責任であり、そして彼をボスに頂くことを選択した群れそのものの責任でもある。

だから俺は口出ししない。悪い結果が出たとしても、その結果を受け止めるようにとは心掛けてる。

ほまれはもう俺の下から巣立ち、自分の力で群れを維持している一人前のおとこだ。

……とは言いつつ、親心としては、もし頼られたら力を貸さずにいられないけどな。

が、ほまれが俺を頼ってきたのは、基本的にまどかが生まれた時くらいか。パパニアンの群れの中でも生き延びたじゅんのような例もあるにはあるが、あれはあくまで奇跡のような偶然が重なって生じた例外的な事例でしかないと思う。

じゅんを生んだ母親か、もしくは母親以外の別の雌がじゅんを見捨てず育てたのと、たまたまその時の群れのボスが排除しようとしなかったことで生き延びられただけだろう。普通はまず母親に育児放棄されるか、異様な怪物と見做されて排除されるかのどちらかだろうしな。

まどかの場合も、そもそも実の母親に恐れられ、他の雌も手を差し伸べようとはしなかったことで、ほまれは、自分達の群れでは育てられないと判断し、自ら異物を排除すると見せかけて俺達のところまでまどかを連れて来てくれたんだ。

自分にできないことは無理をせず、できる者に頼る。

『他人を頼るのは、自分の価値を下げること』

みたいに考えて自分にはできもしないことをやれるフリする……なんてことがないほまれを、俺は誇りに思う。

同時に、

『自分にできることを、ただ楽をしたいだけで他人任せにする』

こともないからな。

そのほまれたもつを追い出さないのなら、俺がとやかく言うことじゃないよ。

それにたもつも、決して、親の脛をかじってるだけの頼りない奴じゃない。ちゃんと群れの中での役目をしっかり果たしてる。

だから、<将来のボス候補の一人>でもあるんだ。

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