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新世代

來編 順序

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自分の都合や感覚だけを一方的に優先しようとすれば、人間は、世界そのものと正面切って戦うことになる。

<世界>というもの自体が、そもそも人間にばかり都合よくできていない。

なにしろ、度々<天災>などにも見舞われたりするし、恐ろしいウイルスや細菌が度々生まれたりするしな。

そういう、短期的なものだけじゃなくても、地面がゆっくりと動いていることで、人間が勝手に決めた<境界線>がずれていって、そのずれた分の権利をどうするかで、人間同士が揉めることさえある。

つまるところ人間は、この世界そのもののごく一部を<間借り>して生きてるだけに過ぎないってことだ。

<人間そのものがこの世界のルール>

ってわけじゃないってことを、俺も改めて教わったよ。

人間側の<俺ルール>なんてものを一方的に押し付けるというのは、現実問題として通用しないってことだな。

だから、きたるのアプローチをやめさせることはできない。

どこまで行っても俺達の側がこの世界のルールとどう折り合うか?ってことだけだ。

ビアンカの久利生くりうに対する気持ちは命まで賭けてのものかどうかというのもあるだろうし。

と、こうやって自分を納得させることで俺は折り合ってきたんだが、ビアンカはどうするのかな。

嫉妬をむき出しにして対抗してもきたるも引き下がらないだろう。それにきたるは、別に久利生くりうを独占しようとしているわけじゃない。

言ってしまえばこれは、

『どっちが先に久利生くりうと関係を持つか?』

という話でしかない。しかも、きたるはその順序にはまったく拘っていない。ビアンカが一方的に拘っているだけだ。

特にクロコディアは、クロコディア同士でまとまって暮らしていても、そこにはパパニアンのそれのような明確な<序列>はない。

『やったもの勝ち』

『早いもの勝ち』

が基本ルールだ。

年齢や性別さえも関係ない。

となれば、ビアンカが先に久利生くりうと関係を持ったところで、きたるはそれを一ミリも気にしないだろう。

改めて言うが、これは完全にビアンカの気持ちだけの問題だ。

しかし俺はそれを、

『くだらない!』

とは断じない。

人間(地球人)が<感情の生き物>である以上、感情を蔑ろにすることは決して合理的じゃないからな。

そして、自身の感情とどう折り合いをつけるかというのは、人間(地球人)にとっては大切なことだ。他人の感情を蔑ろにはせず、その上で自分の感情をいかに納得させるか。

『感情の上で、気持ちの上で、どうしても引けない』

という時にはどのように解決を図るのか。

それが人間(地球人)に求められる<スキル>なのかもしれない。

って、俺は思うんだよ。

ビアンカが、

久利生くりうと結ばれたい』

という気持ちを抑えて<我慢>するにしても、それに正直になるにしても、たぶん、どちらも痛みを伴う選択になるだろう。

なら俺は、家族として、ビアンカの<痛み>に想いを寄せたいと思うよ。

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