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新世代
來編 乾杯
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<灯、來、ビアンカ、久利生の結婚記念パーティ>は滞りなく和やかに終わり、和と陽を寝かしつけるために家に戻った光と、<実家>とも言える庭の池で寝てしまった來を除いた、俺、シモーヌ、灯、ビアンカ、久利生の五人で改めて酒を酌み交わした。
コーネリアス号に保管されていたブランデーだった。
コルク栓が施されたワインの類はさすがに経年劣化で全滅してたが、瓶で完全密封の上に定温保管室に置かれていたブランデーの一部は、成分分析の結果、二千二百年以上経過した今でも十分に飲めるものだったんだ。
変質しない瓶の中で静的に保管されてたことで、ブランデーそのものも変質しなかったということだな。
「まさか、二千年物のブランデーを飲むことになるとはね」
久利生が苦笑いを浮かべながら言う。
人間社会でも、極稀に千年単位の時間を経たブランデーなどが発見されてそれが高額で取引されたりして話題になったりもするが、さすがに口にすることなんてそうそうないだろう。しかも、大抵は保存状態に難があったりして変質してしまい、飲用には向かないものになってるのがほとんどだったそうだし。
だが、断熱性能が一般的な保管庫などとは桁違いの宇宙船で、かつその中でも食料などを長期保存するために設けられた保管室で保管されてたことで、奇跡的に品質が保たれてたようだ。
俺達がこれまでお世話になったコーヒーや粉ミルクもそこから発見された。
ブランデーについても、俺とシモーヌ以外は飲まなかったし、ビアンカが来てようやく三人でちびりちびりとやったりしてたが、そこに久利生も加わって、いよいよ<酒宴>って感じになってきたな。
ちなみに、光も灯も酒は飲まない。飲めなくもないものの彼女らの脳には、
『毒だ!』
という認識しか持てないみたいで、『美味い』と思えないんだとか。
まあ、飲めなくても別に困らないから、構わない。
だから灯は、<ザクロモドキ>のフレッシュジュースで乾杯だ。
「灯と來とビアンカと久利生の門出に、改めて乾杯!」
俺が音頭を取り、五人でグラスを掲げて乾杯する。
そして……
「俺もこれまで、何人も子供達が巣立つのを見送ってきたが、まさか<人間>として娘の結婚を見送ることになるとは思っていなかった……だからなんて言っていいのか分からないが……」
そこまで言ったところで、ぐうっと胸に何かがこみ上げてきて、言葉が詰まってしまう。
「……あ…う……」
喋ろうとするのに、言葉が出ない。言葉の代わりに、涙が……
「錬是……」
そんな俺の背を、シモーヌが撫でてくれる。
正直、娘の結婚式とかで父親が泣いたりするのを、今まではどこか冷めた目で見てた気がする。
けれど、いざ自分がその立場になると……
『はは……なるほどこういうことか……』
なんかもう、理屈とかすっとばして、涙しか出てこないよ……
そんな俺を、灯と、ビアンカと、久利生が、穏やかに微笑みながら見てくれてたのだった。
コーネリアス号に保管されていたブランデーだった。
コルク栓が施されたワインの類はさすがに経年劣化で全滅してたが、瓶で完全密封の上に定温保管室に置かれていたブランデーの一部は、成分分析の結果、二千二百年以上経過した今でも十分に飲めるものだったんだ。
変質しない瓶の中で静的に保管されてたことで、ブランデーそのものも変質しなかったということだな。
「まさか、二千年物のブランデーを飲むことになるとはね」
久利生が苦笑いを浮かべながら言う。
人間社会でも、極稀に千年単位の時間を経たブランデーなどが発見されてそれが高額で取引されたりして話題になったりもするが、さすがに口にすることなんてそうそうないだろう。しかも、大抵は保存状態に難があったりして変質してしまい、飲用には向かないものになってるのがほとんどだったそうだし。
だが、断熱性能が一般的な保管庫などとは桁違いの宇宙船で、かつその中でも食料などを長期保存するために設けられた保管室で保管されてたことで、奇跡的に品質が保たれてたようだ。
俺達がこれまでお世話になったコーヒーや粉ミルクもそこから発見された。
ブランデーについても、俺とシモーヌ以外は飲まなかったし、ビアンカが来てようやく三人でちびりちびりとやったりしてたが、そこに久利生も加わって、いよいよ<酒宴>って感じになってきたな。
ちなみに、光も灯も酒は飲まない。飲めなくもないものの彼女らの脳には、
『毒だ!』
という認識しか持てないみたいで、『美味い』と思えないんだとか。
まあ、飲めなくても別に困らないから、構わない。
だから灯は、<ザクロモドキ>のフレッシュジュースで乾杯だ。
「灯と來とビアンカと久利生の門出に、改めて乾杯!」
俺が音頭を取り、五人でグラスを掲げて乾杯する。
そして……
「俺もこれまで、何人も子供達が巣立つのを見送ってきたが、まさか<人間>として娘の結婚を見送ることになるとは思っていなかった……だからなんて言っていいのか分からないが……」
そこまで言ったところで、ぐうっと胸に何かがこみ上げてきて、言葉が詰まってしまう。
「……あ…う……」
喋ろうとするのに、言葉が出ない。言葉の代わりに、涙が……
「錬是……」
そんな俺の背を、シモーヌが撫でてくれる。
正直、娘の結婚式とかで父親が泣いたりするのを、今まではどこか冷めた目で見てた気がする。
けれど、いざ自分がその立場になると……
『はは……なるほどこういうことか……』
なんかもう、理屈とかすっとばして、涙しか出てこないよ……
そんな俺を、灯と、ビアンカと、久利生が、穏やかに微笑みながら見てくれてたのだった。
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