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新世代
來編 ご両親の意向
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『ビアンカ! 久利生と一緒に私のものになってくれ!!』
灯のそんな突拍子もない<プロポーズ>は、人間の感覚に囚われていたビアンカの心を大いに揺さぶったようだ。
『どっちか』
じゃない。
『どっちも』
という灯は、本気でビアンカと久利生の二人ともを幸せにするつもりだろう。
欲張りだ。とんでもなく欲張りで傲慢だ。だが、灯にとってはそれが当然の結論で、ビアンカもそれを受け入れた。俺が考えてたあれこれなんかまったくもって『余計なお世話』だった。灯はもう、自分の尻も拭ける立派な<大人>なんだ。
はは……子供はいつまで経っても子供だと思ってるのは親の方だけだってことだな。
だが、こうなると後は久利生の問題か。
二人は満面の笑顔で久利生の方に向き直った。
すると、それまではほとんど『動じる』ということがなかった彼が、明らかに『困った』顔をしていた。
女性から、ここまで堂々と、
『恋のライバルごと幸せにしてやる!!』
的な宣言を受けたことは、人間社会ではさすがになかっただろう。彼を巡って<恋の鞘当>を演じた女性はきっと多かっただろうが。
「久利生!」
「少佐!」
完全に意見の一致をみた二人は、ぐい!と彼に迫る。
灯とビアンカがお互いに噛み合わないタイプだったら、きっとこうはなっていなかった。普通に彼を巡って火花を散らしていただけだろう。
なのに、二人は噛み合ってしまった。二人共に、
『恋のライバルごと幸せにしてやる!!』
と思えてしまった。
元々『そういう習性』だった密達が俺をシェアしたのとはわけが違う。いや、まあ、灯ははっきりと密達と同じメンタリティを持ってはいるが、ビアンカは、多少変化しつつあったとしても紛れもなく人間寄りのメンタリティを持っている。
『一人の男性を他の女性とシェアするなんて、有り得ない!』
と普通は考える、男の側がよく妄想するような、
『どっちも俺にとっては大切だ! 選べない! だから二人とも愛する!』
なんてムシのいい考えに納得してくれるはずはなかった。
なのに、
『灯となら』
と思ってしまった。
これは本当に久利生とて想定外だっただろう。自分に言い寄ってくるたくさんの女性を見ていればこそ、普通は誰もが、
『自分一人を愛して欲しい!』
と願うことを知っていただろうな。
いやいや、これはもう彼が動揺するのも当然だ。普通は有り得ないはずだから。
灯とビアンカはさらに彼に迫って、
「私が久利生もビアンカも幸せにする!」
「私が少佐も灯も幸せにします!」
同時に言う。
そんな二人に、久利生は、
「わ…分かった…! 二人の気持ちは分かったから、僕にも少し考える時間をくれないか?」
両手を掲げて二人を制しながら応えた。
まあ当然か。結婚は、本来、双方の合意によってのみ成立するものという大前提があるからな。
そして彼は、灯に向かって、
「特に、灯の場合は、ご両親の意向もあると思う。それを窺ってからでもいいんじゃないかな…」
と、何とか口にしたのだった。
灯のそんな突拍子もない<プロポーズ>は、人間の感覚に囚われていたビアンカの心を大いに揺さぶったようだ。
『どっちか』
じゃない。
『どっちも』
という灯は、本気でビアンカと久利生の二人ともを幸せにするつもりだろう。
欲張りだ。とんでもなく欲張りで傲慢だ。だが、灯にとってはそれが当然の結論で、ビアンカもそれを受け入れた。俺が考えてたあれこれなんかまったくもって『余計なお世話』だった。灯はもう、自分の尻も拭ける立派な<大人>なんだ。
はは……子供はいつまで経っても子供だと思ってるのは親の方だけだってことだな。
だが、こうなると後は久利生の問題か。
二人は満面の笑顔で久利生の方に向き直った。
すると、それまではほとんど『動じる』ということがなかった彼が、明らかに『困った』顔をしていた。
女性から、ここまで堂々と、
『恋のライバルごと幸せにしてやる!!』
的な宣言を受けたことは、人間社会ではさすがになかっただろう。彼を巡って<恋の鞘当>を演じた女性はきっと多かっただろうが。
「久利生!」
「少佐!」
完全に意見の一致をみた二人は、ぐい!と彼に迫る。
灯とビアンカがお互いに噛み合わないタイプだったら、きっとこうはなっていなかった。普通に彼を巡って火花を散らしていただけだろう。
なのに、二人は噛み合ってしまった。二人共に、
『恋のライバルごと幸せにしてやる!!』
と思えてしまった。
元々『そういう習性』だった密達が俺をシェアしたのとはわけが違う。いや、まあ、灯ははっきりと密達と同じメンタリティを持ってはいるが、ビアンカは、多少変化しつつあったとしても紛れもなく人間寄りのメンタリティを持っている。
『一人の男性を他の女性とシェアするなんて、有り得ない!』
と普通は考える、男の側がよく妄想するような、
『どっちも俺にとっては大切だ! 選べない! だから二人とも愛する!』
なんてムシのいい考えに納得してくれるはずはなかった。
なのに、
『灯となら』
と思ってしまった。
これは本当に久利生とて想定外だっただろう。自分に言い寄ってくるたくさんの女性を見ていればこそ、普通は誰もが、
『自分一人を愛して欲しい!』
と願うことを知っていただろうな。
いやいや、これはもう彼が動揺するのも当然だ。普通は有り得ないはずだから。
灯とビアンカはさらに彼に迫って、
「私が久利生もビアンカも幸せにする!」
「私が少佐も灯も幸せにします!」
同時に言う。
そんな二人に、久利生は、
「わ…分かった…! 二人の気持ちは分かったから、僕にも少し考える時間をくれないか?」
両手を掲げて二人を制しながら応えた。
まあ当然か。結婚は、本来、双方の合意によってのみ成立するものという大前提があるからな。
そして彼は、灯に向かって、
「特に、灯の場合は、ご両親の意向もあると思う。それを窺ってからでもいいんじゃないかな…」
と、何とか口にしたのだった。
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