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新世代

來編 専権事項

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人間の、いや、人間に限らないのかもしれないが、<好み>ってやつは実に不思議だ。イケメンや美女がモテるのは当然だとしても、だからって全員が同じイケメンや美女に惚れるわけじゃない。

俺も、<外見上の好み>もあるのは事実だが、見た目で惹かれてしまうことがあるのも事実だが、実は見た目だけで惚れてしまうという経験はこれまでなかった。

いや、自分が覚えていないくらい幼い頃はどうかは分からないが、少なくとも覚えている限りではない。

俺は、基本的に臆病なんだよ。だから相手の人間性みたいなものが分かってこないと、『惹かれる』と言うか『気になる』ことはあっても『惚れる』ところまで行かないんだ。

あと、相手が俺のことを好きになってくれてないと、ある程度以上の<好意>を持ってくれてるという実感がないと、俺も好きにはなれないんだ。『悪からず思ってる』とか、『友達だと思ってる』程度ならあっても、『付き合いたい』というまでにはならない。

シモーヌのことをあくまで<隣人>として接してこられたのも、結局はそれだな。彼女が俺に対して<仲間>以上の気持ちを持ってないのが察せられてたから、余裕で自制できてただけだ。

彼女は魅力的な女性だよ。たまに<そういう気分>になることもなかったわけじゃない。が、我慢できなくなることまではなかった。それは彼女に拒絶されて<良き隣人>としての関係が壊れるのが怖かったからだ。

そういうのを、

『男らしくない!』

とバカにするのもいるだろうが、いや、相手の気持ちも考えずに強引に襲い掛かるのが『男らしい』のか? 俺がここで見てきた野生の動物達だって、

『自分はこんなに魅力的な雄だ!』

とアピールはするものの、アピールそのものはしつこかったりするものの、実際に『襲い掛かる』ような事例はほとんどなかったぞ。たまにそういうのもあったとしても、やっぱり例外的な事例であって、普遍的じゃなかった。

だから俺がシモーヌに対して強引に迫らなかったのも、別にそんなに不自然だとも思わない。自分が人間として誠実であることを貫こうとする姿勢そのものが、たぶん、彼女に対する<アピール>になってて、時間はかかったが彼女がそれを認めてくれて俺をパートナーにしてもいいと思ってくれたのが分かったから、<結婚>しただけだ。

人間もあくまで動物の一種ではあるものの、そう考えたら動物として当然の在り方だったんじゃないだろうか。

無論、納得できない人間もいるだろう。反発するのもいるだろう。だが現に俺達の関係が上手くいってるのなら、俺達にとってはこれが<正解>だったんだよ。

どういう形で結婚するのか、そもそも結婚するかどうかも、それぞれ当人の専権事項だ。他人がそのことに対してケチをつけるのは、<マリッジハラスメント>になったんだよなあ。

『結婚しろ!』

と強要するだけじゃなく、

『結婚するような奴は馬鹿だ!』

みたいなことを言うのも、<マリッジハラスメント>に該当するそうだ。

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