上 下
848 / 2,566
新世代

來編 基本スペック

しおりを挟む
そういう背景もあって、しかし法律も何もないこの惑星ではたとえ自分が<コピー>であってもそれを深刻に受け止める必要がないことを、久利生くりうは理解していたようだ。

だからか彼はとても落ち着いていた。

まったく。いくら軍人だからってビアンカはここまでじゃなかったから、まあこれは彼自身の資質なんだろうな。

とは言え、あんまりオタオタされても困るから助かるというのも正直なところではある。

まずは俺の<群れ>についての概要と、シモーヌとビアンカがどのような経緯でここに加わるようになったかについて簡単に説明すると、

「私も思い出しました」

久利生くりうが言う。

「あの生物の中で私達がどのように生活を送っていたかを」

なんと彼は、あっさり不定形生物の中での記憶も取り戻したのだ。

この辺りは、自身について冷静に客観的に受け止められるようになると記憶が繋がるということかもしれない。精神的に余裕がない間は無意識のうちに記憶に蓋をしてしまうということだろうか。

と、そこに、

あかりとビアンカとイレーネが戻ってきました」

エレクシアの声。

見ると、密林の奥に微かにローバーの姿が見える。

久利生くりうが現れたことを知り、急ぎ帰ってきたビアンカはどうするのだろうか。

クモ人間アラニーズである今の自分を、彼の前に晒すことができるのか……

俺の懸念を、腕の部分のファンデーションを落とし自分が彼と同じであることを示したシモーヌが代弁してくれる。

久利生くりう……ビアンカは、私やあなたとはまた違う姿になってるの……

あなたなら大丈夫だとは思うけど、その事実を受け止めてあげてほしい……」

俺が望んでいるのも、結局はそれだ。彼のことが好きだったというビアンカが打ちひしがれることがないようにとな。

「そうか…」

久利生くりうは静かに応えた。

「だが、心配要らない。私は軍人だ。戦闘で肉体の大部分を失ったことで義体化し、人の姿をなくした仲間の姿も何度も見てきている。どのような姿になっていようと、先ほど言葉を交わした時の印象からすれば、彼女の精神がまったく別のものになってしまったわけではないのだと感じた。

それに私は、現実と向き合う覚悟を忘れないように自らに言い聞かせているよ。

戦闘においてはそれが最も大事だからね」

淡々とそう言い切ってしまう彼に、俺はなんとも言えない気分になっていた。

まるで、敗北感のような……

いや、それ以上の、<諦観>と言った方がいいかもしれない。

人間としての基本スペックが違いすぎる。もし彼がこの<群れ>のボスの座を望むなら、俺はたぶん、太刀打ちできないだろう……

そんな風に思わされていたんだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた

ああああ
恋愛
優は大切にしていた妹の友達に冤罪を掛けられてしまう。 そして冤罪が判明して戻ってきたが

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

処理中です...