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新世代

來編 解釈の問題

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俺とシモーヌがローバーで彼を迎えに向かう間、久利生くりうは、エレクシアの助言を元に例の森殺しフォレストバスターと俺が呼んでいる蔓植物から流れ出る水で泥を流し、それと同時に自身の体の状態を確かめていたそうだ。

例の不定形生物が基になった透明な体を。

しかし彼はそれに取り乱すこともなく、その上で他に異常がないかどうか、骨折などの負傷がないか、自分で確認していったという。

さすが職業軍人というところか。

加えて、大きな問題がないと分かると、周囲に茂っていた植物の大きな葉を摘み、手馴れた様子で太い葉脈の部分を抜き取り、同じように抜き取った葉脈を繋げて紐状にした。

さらに新たに大きな葉を摘んで、そこに葉脈で作った紐を通していって束ね、それを自分の腰に巻いたそうだ。

そう<腰ミノ>と呼ばれるものを、早々に自分で作ってしまったんだ。

さすがに全裸まっぱのままじゃいろいろとあれだからだろう。

にしても、なんと冷静沈着かつ適切な対応。その様子にエレクシアでさえ、

「さすがですね」

と声を掛けたんだと。途方もないハイスペック。

正直、この<群れ>における俺の地位を脅かされるかもしれないとも思ってしまったな。

だが、先に結論から言っておくと、それは杞憂だったけどな。

なぜそれが杞憂だったのかは、おいおい語っていくとして、とにかく今は彼を俺達の集落で保護することにした。

一方、ビアンカの方も、あかりの判断で今日の調査は切り上げ、帰ることにしたそうだ。まあ、<コーネリアス号の仲間>が保護されたとなれば当然か。ましてやビアンカが好きだった相手ともなれば。

そもそも厳格な<任務>でも<仕事>でもないし、俺もあかりの判断に異を唱えるつもりもない。

そうこうしている間にも俺とシモーヌは現場に到着。腰ミノ姿で倒木に腰掛けた久利生くりうの姿を自分の目で確認した。

確かにシモーヌやビアンカと同じく透明な体。紛れもなく例の不定形生物が基になった肉体を持った、

久利生遥偉くりうとおいのコピー>

だ。

ただし、不定形生物が再現した人間を<コピー>としているのはあくまで俺達の認識。当人が、もし、

『自分はコピーじゃない! 本人だ!!』

と主張するなら別にそれで構わないと思っている。所詮、解釈の問題だからな。

が、

「初めまして。改めて自己紹介しましょう。私の名は<久利生遥偉くりうとおい>。助けていただいて感謝します。錬是れんぜ

丁寧に挨拶しながら俺と握手を交わし、続けて、

「やあ。この場合、『久しぶり』と言った方がいいのかな? シモーヌ。元気そうで何よりだ」

シモーヌとも握手を交わした彼は、

「私は『蘇った』というよりは、『<久利生遥偉くりうとおいのコピー>として再現された』と解釈するのが適切なのかな?」

と、自分で言い出したのだった。

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