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新世代
閑話休題 「ミレニアムファルコン号」
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古い映画に登場する宇宙船から名付けたロボットマイクロプレーン<ミレニアムファルコン号>によって空を取り戻した灯だったが、実はこの後、
「あ、やばっ…!」
いきなりそう声を上げて急降下してきた。そして着陸態勢に入ったと思った瞬間、右の翼がポキリと折れるのが、イレーネのカメラに捉えられ、俺達が見ていたタブレットに映し出された。
「灯っ!?」
俺はつい叫んだが、灯の体はその時にはすでにミレニアムファルコン号から離れて、五メートルくらいの高さから地上へと落ちた。
が、地上に足が触れたと同時に体を丸めて転がり、
「ほいっ!」
と声を上げつつ両手を横に広げてピタッと立ち上がってポーズを決めて見せた。
アクシーズに準じた身体能力を持つ灯にとっては、まったくどうということもなかったようだ。
確かに、人間でも軍人とかには三階くらいの高さから落ちても無事に着地できるように訓練を積んでいる者もいると聞く。人間の身体能力でできることならそれこそ余裕なんだろう。
「無事か!? 灯!」
俺が焦りながらそう訊いても、
「あ~、全然問題ナッシング」
と笑ってた。
しかし、ミレニアムファルコン号の方は……
「あっちゃ~。さすがに無理させすぎたか」
頭を掻きつつ、少し悲しそうな表情をしながら、地面に墜落して目茶目茶になったミレニアムファルコン号を見た灯が呟いた。
「無理?」
俺が尋ねると、
「うん。離陸の時にね」
と。
なるほど。あんな一瞬で離陸速度に達するほど急加速したことで想定以上の負荷が掛かったのか。
俺にもそれがピンと来た。
「ごめん。せっかく作ってもらったのに」
灯が申し訳なさそうに、イレーネのカメラの向こうにいる俺に向かって謝ってきた。
でも、
「ああ、いい、いい。灯が無事ならそれで。今回のデータを活かしてまた作り直せばいいだけだ」
俺はそう応えた。彼女の身体能力を過小評価してた俺達の方のミスだ。怒る気にもなれない。
それよりも、機体の異常を敏感に察知して降下させ、翼が折れた瞬間にパージして墜落に巻き込まれないようにとか判断できるこの子がすごいと感心するよ。
で、ミレニアムファルコン号については灯の身体能力についてもさらに加味して再設計。あのとんでもない離陸をしても壊れないものを作った。
「お~! いい! ばっちり!! 安心感が違う!!」
翌週、新生<ミレニアムファルコン号>に乗って飛び上がった灯が嬉しそうに声を上げた。
そうして彼女はそのまま、二時間ほどかけて俺達の<家>まで帰ってきた。
しかも、家の上空まで来たところで急降下して、地面すれすれで機体を起こし急上昇の姿勢に。
でもそれにより機体そのものは失速して、地面にふわりと灯の足が着く。
滑走路をまったく必要としない、アクシーズの灯ならではの着地法なのだった。
「あ、やばっ…!」
いきなりそう声を上げて急降下してきた。そして着陸態勢に入ったと思った瞬間、右の翼がポキリと折れるのが、イレーネのカメラに捉えられ、俺達が見ていたタブレットに映し出された。
「灯っ!?」
俺はつい叫んだが、灯の体はその時にはすでにミレニアムファルコン号から離れて、五メートルくらいの高さから地上へと落ちた。
が、地上に足が触れたと同時に体を丸めて転がり、
「ほいっ!」
と声を上げつつ両手を横に広げてピタッと立ち上がってポーズを決めて見せた。
アクシーズに準じた身体能力を持つ灯にとっては、まったくどうということもなかったようだ。
確かに、人間でも軍人とかには三階くらいの高さから落ちても無事に着地できるように訓練を積んでいる者もいると聞く。人間の身体能力でできることならそれこそ余裕なんだろう。
「無事か!? 灯!」
俺が焦りながらそう訊いても、
「あ~、全然問題ナッシング」
と笑ってた。
しかし、ミレニアムファルコン号の方は……
「あっちゃ~。さすがに無理させすぎたか」
頭を掻きつつ、少し悲しそうな表情をしながら、地面に墜落して目茶目茶になったミレニアムファルコン号を見た灯が呟いた。
「無理?」
俺が尋ねると、
「うん。離陸の時にね」
と。
なるほど。あんな一瞬で離陸速度に達するほど急加速したことで想定以上の負荷が掛かったのか。
俺にもそれがピンと来た。
「ごめん。せっかく作ってもらったのに」
灯が申し訳なさそうに、イレーネのカメラの向こうにいる俺に向かって謝ってきた。
でも、
「ああ、いい、いい。灯が無事ならそれで。今回のデータを活かしてまた作り直せばいいだけだ」
俺はそう応えた。彼女の身体能力を過小評価してた俺達の方のミスだ。怒る気にもなれない。
それよりも、機体の異常を敏感に察知して降下させ、翼が折れた瞬間にパージして墜落に巻き込まれないようにとか判断できるこの子がすごいと感心するよ。
で、ミレニアムファルコン号については灯の身体能力についてもさらに加味して再設計。あのとんでもない離陸をしても壊れないものを作った。
「お~! いい! ばっちり!! 安心感が違う!!」
翌週、新生<ミレニアムファルコン号>に乗って飛び上がった灯が嬉しそうに声を上げた。
そうして彼女はそのまま、二時間ほどかけて俺達の<家>まで帰ってきた。
しかも、家の上空まで来たところで急降下して、地面すれすれで機体を起こし急上昇の姿勢に。
でもそれにより機体そのものは失速して、地面にふわりと灯の足が着く。
滑走路をまったく必要としない、アクシーズの灯ならではの着地法なのだった。
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