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新世代

翔編 永遠の片想い

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掘削作業はマシンに任せて家に帰った俺達を、

「お帰りなさい♡」

とシモーヌが迎えてくれる。

「ただいま戻りました」

エレクシアはいつもと変わらない淡々とした様子で応えた。

正直、俺にとってはエレクシアが<嫁一号>だったわけで、この光景はいろいろ思うところがないわけでもない。

ひそか達がいた頃は、彼女達がそもそも人間じゃなかったし、特に種族として元々群れで暮らす習性のあったひそかふくはそれこそ群れの中での序列を理解していた。だから彼女達がヤキモチを妬くようなことがあってもそれ自体が<自分がより優位な条件で子孫を残そうとするための本能>だったから俺としてもそんなに気にせずに済んだものの、シモーヌの感性は完全に人間(地球人)のそれだしな。

ただし、エレクシアの方は自分を<嫁>だなどとはこれっぽっちも思っていないのも分かってる。何度も言うように彼女はあくまでメイトギア。ロボットだ。どれほど人間が想いを寄せようとも彼女達は本質的にはそれを受け入れない。人間の<想い>は成就することはない。

どんなに妄想を膨らませたところでそれが現実。

だからエレクシアもシモーヌに嫉妬したりしない。

嫁でも恋人でもないんだから当然だな。

本音を言うと、それが少し寂しくもある。彼女がいてくれたからあの当時の俺は生きていられたわけで……

病気の進行を遅らせ日常の生活が送れるようにする薬も効果が望めなくなり、徐々に人間としての姿を失い、それに伴って人間としての精神も失った光莉ひかりを見続けて十数年。そして、完全に怪物のようになったあの子の最後を見届けて何もかもを失くした俺が出逢って一目で魅了された相手。

それがエレクシアだ。

もうどうやって人生を終わらせようかと考えてた俺に、たとえ惑星プラネットハンターなんてヤクザな商売であっても仕事を頑張らせようと思わせてくれたのもエレクシアだ。

それをすることになった原因も、光莉ひかり号とセットだった彼女を無理して買ったからというのは事実でも、少なからず俺を生き延びさせてくれたのもまた事実。

まあその後でまた疲れ果てて夢色星団に投身自殺を図るなんてことをやらかしはしたにせよ、人間ってのは弱い生き物だからな。一度踏ん張れたからってそれがずっと続くとは限らないってことだ。

と言うか、冷静に考えて、光莉ひかりの治療で作った借金は完済され、ヤバいところからの借金も法定金利で計算したらすでに完済済み(どころか、過払い額そのものがすでに元金の倍以上)だったことに気付いて、それまでただただ義務感で支えられてた部分がぽっきり折れたってのも原因の一つだったんだろうなあ。

で、エレクシアと二人きりで最後を迎えたかったと。

もっともそれ自体が、<永遠の片想い>だったわけなんだが。

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