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新世代
翔編 越えられない壁
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新暦〇〇三〇年十二月十三日。
つくづく、ここで暮らし始めてから俺は変わったよ。あの頃は誰のことも信じられず人間嫌いになってた俺が、こうやってシモーヌと夫婦になってるっていうんだから。
正直、密達は『人間とは違う』から愛することができてた気がする。
もちろん、密達のことは今でも愛してる。俺の心を支えてくれるかけがえのない存在だ。ただ同時に、『人間じゃなかったから愛せたんだろうな』という事実から目を背けるのも違うと思うんだ。
それで言うと、エレクシアのこともそうだな。俺が彼女に依存できたのも、彼女が人間じゃなくメイトギアだったからだ。そのおかげで俺は彼女を愛することができた。
その気持ちは今でも変わっていない。俺はエレクシアのことも愛してる。けれど、彼女はロボットだから、俺のそういう気持ちは本当には受け入れてくれない。大切にはしてくれるが、それはあくまで『ロボットして人間に奉仕する』だけなんだ。
人間社会にもロボットを愛してしまうのは他にもいたものの、それらも結局は<永遠の片想い>だったんだろうなあ。
ロボットの人間へのそれは、<人間としての愛>じゃない。どこまで行っても<無私の奉仕>なんだ。
だからエレクシアも、俺とシモーヌが結ばれてもこれまでと何一つ変わることなく黙々と自分の務めを果たしてくれる。恐らく人間には決して真似できないものだ。
人間には<心>があるが故に。
そしてロボットには、<心>がないが故に。
この辺りが、人間とロボットの間にある、越えられない壁なんだろうな。
その辺りは、<ラブドール>がかなり頑張ってくれてるようだ。もちろんラブドールもロボットであり心を持たないからやっぱり人間同士のそれとは違うんだが、少なくともメイトギアよりは『それっぽく』振る舞ってくれるそうだし。だからこそ<代償行動>としての意味も持つということか。
けれど俺は、標準的なメイトギアが常に浮かべている穏やかな笑顔を『嘘くさい』と感じてしまって毛嫌いしてたくらいだから、ラブドールの人間に媚を売るような振る舞いとかそれこそ吐き気がするほど嫌悪してた。今から思うとそれだけ病んでたんだなあ。そんなどうでもいいことが気になって仕方ないくらいに。
なんてことを思いつつ、エレクシアと一緒に新しい集落候補地へと向かう。
途中、アリゼとドラゼのところにも寄って、問題なく順調に村作りが進んでるのも確認した。
その時、凌が、集落の外れの木の上にとまって俺達を見てるのに気付く。あいつも元気そうでよかった。
凌は、<叔父>にあたる彗と同じ年に生まれた。だからもう立派な成体だ。しかも彗と同じくここまでパートナーに恵まれなかった。
だからこそ、清良と出逢えた彗のように、いい出逢いがあるといいなと、父親としては思ってしまうよ。
つくづく、ここで暮らし始めてから俺は変わったよ。あの頃は誰のことも信じられず人間嫌いになってた俺が、こうやってシモーヌと夫婦になってるっていうんだから。
正直、密達は『人間とは違う』から愛することができてた気がする。
もちろん、密達のことは今でも愛してる。俺の心を支えてくれるかけがえのない存在だ。ただ同時に、『人間じゃなかったから愛せたんだろうな』という事実から目を背けるのも違うと思うんだ。
それで言うと、エレクシアのこともそうだな。俺が彼女に依存できたのも、彼女が人間じゃなくメイトギアだったからだ。そのおかげで俺は彼女を愛することができた。
その気持ちは今でも変わっていない。俺はエレクシアのことも愛してる。けれど、彼女はロボットだから、俺のそういう気持ちは本当には受け入れてくれない。大切にはしてくれるが、それはあくまで『ロボットして人間に奉仕する』だけなんだ。
人間社会にもロボットを愛してしまうのは他にもいたものの、それらも結局は<永遠の片想い>だったんだろうなあ。
ロボットの人間へのそれは、<人間としての愛>じゃない。どこまで行っても<無私の奉仕>なんだ。
だからエレクシアも、俺とシモーヌが結ばれてもこれまでと何一つ変わることなく黙々と自分の務めを果たしてくれる。恐らく人間には決して真似できないものだ。
人間には<心>があるが故に。
そしてロボットには、<心>がないが故に。
この辺りが、人間とロボットの間にある、越えられない壁なんだろうな。
その辺りは、<ラブドール>がかなり頑張ってくれてるようだ。もちろんラブドールもロボットであり心を持たないからやっぱり人間同士のそれとは違うんだが、少なくともメイトギアよりは『それっぽく』振る舞ってくれるそうだし。だからこそ<代償行動>としての意味も持つということか。
けれど俺は、標準的なメイトギアが常に浮かべている穏やかな笑顔を『嘘くさい』と感じてしまって毛嫌いしてたくらいだから、ラブドールの人間に媚を売るような振る舞いとかそれこそ吐き気がするほど嫌悪してた。今から思うとそれだけ病んでたんだなあ。そんなどうでもいいことが気になって仕方ないくらいに。
なんてことを思いつつ、エレクシアと一緒に新しい集落候補地へと向かう。
途中、アリゼとドラゼのところにも寄って、問題なく順調に村作りが進んでるのも確認した。
その時、凌が、集落の外れの木の上にとまって俺達を見てるのに気付く。あいつも元気そうでよかった。
凌は、<叔父>にあたる彗と同じ年に生まれた。だからもう立派な成体だ。しかも彗と同じくここまでパートナーに恵まれなかった。
だからこそ、清良と出逢えた彗のように、いい出逢いがあるといいなと、父親としては思ってしまうよ。
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