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新世代
走・凱編 疲労
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新暦〇〇二九年十月十三日。
ビアンカの下を訪れたのは、メイフェア、イレーネ、セシリアだけじゃない。
当然のようにシモーヌも、
「体の方は大丈夫?」
と、ビアンカの体調管理のために顔を出す。
「はい、問題ありません」
さすがに軍人だけあってこの辺りはビアンカも慣れたものということなんだろう。加えて、今の彼女はアラニーズとして野生に適応できる身体能力もある。
そのおかげか、青空の下でシャワーを浴びたりと、存外、今の生活を楽しんでいるかのような様子もあったようだ。
もちろん、それは彼女やメイフェア達から聞いただけで、俺は見てないぞ。
そうこうしている間にも日は過ぎ、あっという間に一ヶ月が過ぎた。レオンやオオカミ竜の群れは、ビアンカやドーベルマンDK-aを警戒して近付かず、取り敢えず自分達の周囲にいた草食動物を狩っていたが、残念ながらやはり数が決定的に足りず、それぞれで奪い合いが起こり、双方に犠牲が出ていた。
その様子を映し出したドローンの映像を、ビアンカも悲しげに見詰める。
走達を守りたいが、だからといって他のレオンやオオカミ竜に恨みがあるわけでもない。できることならそちらも守ってやりたい。その葛藤が彼女にもあるのが分かる。
けれど彼女は<軍人>だから、自身が守るべき対象を違えることもない。
ないんだが、やっぱり彼女も<人間>なんだよな。
その辺りのストレスによって疲れが出ていたようだ。
俺もそれは感じていて、
「本当に無理はしなくていいからな」
とは言ったんだが、彼女は、
「大丈夫です」
と応えただけだった。
新暦〇〇二九年十月二十七日。
しかし、一ヵ月半が経ったある夜。疲労がピークに達していたんだろう。アラニーズである今のビアンカでも交代なしでの警戒任務はさすがに無理があったか。彼女は居眠りをしてしまったようだ。だから、接近警報に気付くのが遅れた。
ドーベルマンDK-aが威嚇のために発砲し、その銃声でようやく目が覚めたらしい。
「状況は!?」
焦ったビアンカが状況把握に努めると、レオンの群れがビアンカのいる場所を大きく迂回して、走達の縄張りへと侵入、<畑>の近くで狩りをしていた走のグループへと接近していた。
「く……っ!!」
ビアンカは迂闊な自分を呪いつつも、六本の脚をフル回転させて、走った。その速度は六十キロに達し、夜目も利くことで昼間と変わらず草原を走り抜けることができた。
なるほど今の彼女ならわざわざローバーに乗り込まなくても走った方が早い。
一方、走達の方も<敵>の接近を察知していた。
「ぐるっ!!」
走が、仲間達に警戒を促す唸り声を発し、群れ全体に緊張が走る。特に攻撃的な性格の釈は、
「しゃーっ!!」
警戒音を発して、自分達の方へと向かってくるレオンを威嚇したのだった。
ビアンカの下を訪れたのは、メイフェア、イレーネ、セシリアだけじゃない。
当然のようにシモーヌも、
「体の方は大丈夫?」
と、ビアンカの体調管理のために顔を出す。
「はい、問題ありません」
さすがに軍人だけあってこの辺りはビアンカも慣れたものということなんだろう。加えて、今の彼女はアラニーズとして野生に適応できる身体能力もある。
そのおかげか、青空の下でシャワーを浴びたりと、存外、今の生活を楽しんでいるかのような様子もあったようだ。
もちろん、それは彼女やメイフェア達から聞いただけで、俺は見てないぞ。
そうこうしている間にも日は過ぎ、あっという間に一ヶ月が過ぎた。レオンやオオカミ竜の群れは、ビアンカやドーベルマンDK-aを警戒して近付かず、取り敢えず自分達の周囲にいた草食動物を狩っていたが、残念ながらやはり数が決定的に足りず、それぞれで奪い合いが起こり、双方に犠牲が出ていた。
その様子を映し出したドローンの映像を、ビアンカも悲しげに見詰める。
走達を守りたいが、だからといって他のレオンやオオカミ竜に恨みがあるわけでもない。できることならそちらも守ってやりたい。その葛藤が彼女にもあるのが分かる。
けれど彼女は<軍人>だから、自身が守るべき対象を違えることもない。
ないんだが、やっぱり彼女も<人間>なんだよな。
その辺りのストレスによって疲れが出ていたようだ。
俺もそれは感じていて、
「本当に無理はしなくていいからな」
とは言ったんだが、彼女は、
「大丈夫です」
と応えただけだった。
新暦〇〇二九年十月二十七日。
しかし、一ヵ月半が経ったある夜。疲労がピークに達していたんだろう。アラニーズである今のビアンカでも交代なしでの警戒任務はさすがに無理があったか。彼女は居眠りをしてしまったようだ。だから、接近警報に気付くのが遅れた。
ドーベルマンDK-aが威嚇のために発砲し、その銃声でようやく目が覚めたらしい。
「状況は!?」
焦ったビアンカが状況把握に努めると、レオンの群れがビアンカのいる場所を大きく迂回して、走達の縄張りへと侵入、<畑>の近くで狩りをしていた走のグループへと接近していた。
「く……っ!!」
ビアンカは迂闊な自分を呪いつつも、六本の脚をフル回転させて、走った。その速度は六十キロに達し、夜目も利くことで昼間と変わらず草原を走り抜けることができた。
なるほど今の彼女ならわざわざローバーに乗り込まなくても走った方が早い。
一方、走達の方も<敵>の接近を察知していた。
「ぐるっ!!」
走が、仲間達に警戒を促す唸り声を発し、群れ全体に緊張が走る。特に攻撃的な性格の釈は、
「しゃーっ!!」
警戒音を発して、自分達の方へと向かってくるレオンを威嚇したのだった。
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