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新世代
走・凱編 固い意思
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新暦〇〇二九年九月六日。
インパラに似た草食動物(仮にインパラ竜と呼称する)の中で流行した疫病で、インパラ竜とその近似種が大量死してから二ヶ月。
幸い、疫病そのものは終息したものの、個体数は推定で四分の一以下になったようだ。その所為で肉食動物の獲物も激減。最初の頃こそは死んだインパラ竜を食ったりもしてたものの、当然それもすぐなくなり、獲物の奪い合いが始まった。
地域的には走達の縄張りからは結構離れていて直接の影響はなかったとはいえ、獲物を求めて肉食動物達が流れ込んできていた。こちらの方までは疫病は広まらなかったし、何より、<畑>を目当てに住み着いた草食動物が多い。飢えた肉食動物らにとっては文字通り<垂涎の的>だろう。それを求めてやってくるのは自明の理か。
しかも、厄介なことに、他の群のライオン人間や、オオカミ竜が、かなりの数、な。
ドーベルマンDK-aを巡回させることでこれまではあまり近付かせないようにしてきたんだが、向こうも獲物不足が深刻で、少々危険を冒してでもってことになってるようだ。スタン弾を装填した小銃で威嚇をするものの、完全には逃げてくれない。隙を狙おうとしてるのか、遠巻きに様子を窺ってくる。
現在、ライオン人間の群が三つ。オオカミ竜の群が二つ。互いに小競り合いをしながら走達の縄張りのすぐ近くまで近付いてきているな。
三つ巴、四つ巴の戦いになる可能性がある。
「これはヤバいな……」
「ええ…こちらにはドーベルマンDK-aがありますから縄張り自体は守れるとしても、犠牲者が出るかもしれません……
ただ、インパラ竜が減ったことで、植物が繁茂してきてますので、残ったインパラ竜は豊富な餌にありつけますし、それによってまた数を増やしてくるでしょう。半年から一年が堪え時でしょうね」
俺とシモーヌが、ドーベルマンDK-aが送ってくる映像を見ながら話していると、ビアンカが、キッと引き締まった表情で、
「私にも警護に当たらせてください」
と。
「ビアンカ…」
確かに彼女ならドーベルマンDK-aと同等以上の働きをするだろう。しかし……
「しかし、危険だぞ。特にオオカミ竜は数が多い上にボクサー竜よりも体が大きくて凶暴だ」
俺の言葉にビアンカは首を振る。
「私は、走達が好きです。彼らを守りたい。そして今の私にはその力があります。仲間を守れる力を持ちながら手をこまねいて見ていることは、私にはできません……!」
固い意思を感じさせる彼女の目を見ていると、俺も強く反論することができなかった。
「分かった……これから当面の間、ビアンカに走達の警護をお願いする。ちょうどアリスシリーズとドライツェンシリーズの試作機も実用レベルにまで仕上がってきてるし、使ってくれ」
インパラに似た草食動物(仮にインパラ竜と呼称する)の中で流行した疫病で、インパラ竜とその近似種が大量死してから二ヶ月。
幸い、疫病そのものは終息したものの、個体数は推定で四分の一以下になったようだ。その所為で肉食動物の獲物も激減。最初の頃こそは死んだインパラ竜を食ったりもしてたものの、当然それもすぐなくなり、獲物の奪い合いが始まった。
地域的には走達の縄張りからは結構離れていて直接の影響はなかったとはいえ、獲物を求めて肉食動物達が流れ込んできていた。こちらの方までは疫病は広まらなかったし、何より、<畑>を目当てに住み着いた草食動物が多い。飢えた肉食動物らにとっては文字通り<垂涎の的>だろう。それを求めてやってくるのは自明の理か。
しかも、厄介なことに、他の群のライオン人間や、オオカミ竜が、かなりの数、な。
ドーベルマンDK-aを巡回させることでこれまではあまり近付かせないようにしてきたんだが、向こうも獲物不足が深刻で、少々危険を冒してでもってことになってるようだ。スタン弾を装填した小銃で威嚇をするものの、完全には逃げてくれない。隙を狙おうとしてるのか、遠巻きに様子を窺ってくる。
現在、ライオン人間の群が三つ。オオカミ竜の群が二つ。互いに小競り合いをしながら走達の縄張りのすぐ近くまで近付いてきているな。
三つ巴、四つ巴の戦いになる可能性がある。
「これはヤバいな……」
「ええ…こちらにはドーベルマンDK-aがありますから縄張り自体は守れるとしても、犠牲者が出るかもしれません……
ただ、インパラ竜が減ったことで、植物が繁茂してきてますので、残ったインパラ竜は豊富な餌にありつけますし、それによってまた数を増やしてくるでしょう。半年から一年が堪え時でしょうね」
俺とシモーヌが、ドーベルマンDK-aが送ってくる映像を見ながら話していると、ビアンカが、キッと引き締まった表情で、
「私にも警護に当たらせてください」
と。
「ビアンカ…」
確かに彼女ならドーベルマンDK-aと同等以上の働きをするだろう。しかし……
「しかし、危険だぞ。特にオオカミ竜は数が多い上にボクサー竜よりも体が大きくて凶暴だ」
俺の言葉にビアンカは首を振る。
「私は、走達が好きです。彼らを守りたい。そして今の私にはその力があります。仲間を守れる力を持ちながら手をこまねいて見ていることは、私にはできません……!」
固い意思を感じさせる彼女の目を見ていると、俺も強く反論することができなかった。
「分かった……これから当面の間、ビアンカに走達の警護をお願いする。ちょうどアリスシリーズとドライツェンシリーズの試作機も実用レベルにまで仕上がってきてるし、使ってくれ」
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