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新世代

走・凱編 個体差

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駿しゅんの群れの子供達ともそういう形で遊ぶこともあるかんとは違い、こうはある程度の距離を置くようにしているようだ。

まあこれは、かんが雌なのに対してこうが雄だからというのもあるのかもしれない。

半分はパルディアの血を引いててももう半分はレオンであるかんには<群れ>を維持する感覚が多少なりともあり、それが影響してる可能性はあるな。

対してこうは、群れを作らないパルディアの気質を強く受け継いでる上に雄だから馴れ合うことを嫌う傾向があるのかもしれないな。

だが、それでいい。兄妹だからって同じである必要はまったくない。むしろ違っていることに意味があるんだろう。

こうは一人で行動し、一人で寝て、一人で狩りをする。でも時々、しんのところに帰ってきて、甘えたりもしていた。かと思うとまた一人で過ごす。

つまりその時点では完全に巣立ったわけじゃなかったとも言えるのかもしれないが、それもいいだろう。<巣立ち>というものも、人間が思ってるよりは、

『今日この時より親でもなければ子でもない!』

みたいにきっちりと区別されてるものだとは限らないのかもしれない。割と個体ごとに差がある可能性も高いよな。

もしこれでこうが巣立ちに失敗していたんだとしても、そういう個体だって自然の中にもいるんだろう。それも自然の摂理の一つだと思ってた。それがビアンカが来たことで結果として完全に巣立ちした形になるのか。

人間に限らず、生物は工業製品じゃない。すべての個体がまったく同じように成長して同じように行動して同じように生きるわけじゃない。

その現実を理解してないと、<生きる>ということがどういうことかも分からないんじゃないかな。

『個体差がある』

ことがもう生きるという事象において必要なことのはずなんだ。すべての個体が完璧に同じことを確実に繰り返すわけじゃないのは、ちょっと生き物を観察したことのある人間なら分かることだと思うし、俺もここに来てつくづく実感した。

他の個体と同じようにできないのは<異常>じゃない。生物が元々持っている<生存戦略>だ。違いを認められないのは種としての柔軟性を失わせ、生き残る可能性を狭めることになる。

だから、AI排斥主義、ロボット排斥主義者の存在も、実は<多様性>という点で必要なことなんだろうな。

もちろん、だからってテロを行うというのはそれ自体が多様性の否定であり、むしろ自分達の立場を悪くする蛮行だから控えなきゃいけないのも事実だと思う。

せっかく、生存できる環境を広げたんだから、住み分けを徹底すればいいじゃないか。

AI排斥主義、ロボット排斥主義者達も、自分達とは違う価値観を持つ者がいること自体が必要なことだと気付いてくれれば、もっと穏やかに生きられるだろうにな。

まあ、実際には、AI排斥主義、ロボット排斥主義者の中にもわざわざ別の価値観を持つ者を攻撃する必要はないと思ってるのもいるんだろうけどな。

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