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新世代

走・凱編 信頼

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人間同士の関係というやつは、相手に対して一方的に自分の要求や都合や権利を主張するだけじゃ上手くいかないということは、歴史が証明してきている。

とにかくまず自分達の要求や都合や権利を一方的に主張して相手がそれを拒めば武力によって押し通すというやり方が、多くの犠牲だけじゃなくその後も百年千年と尾を引く禍根を残す結果になったことは、十字軍とそれによる恨みの連鎖あたりの話を持ち出すまでもなく、二十一世頃の日本でも、周辺諸国からの一方的な難癖に等しい要求のあれこれによってかなり険悪な状態だったと聞く。

しかし当時の日本は、敢えてそれを武力によって撥ね退けるのではなく、あくまでのらりくらりと躱し続けることによって戦争を回避したというじゃないか。

日本にルーツを持つ俺としては、それをむしろ誇りに思う。

そこまで大きな話でなくても、日常的に、要求や都合や権利を一方的に押し付けてくる相手のことは疎ましく思うだろう? そういう経験はあるだろう? そういう相手のことは、もし災害などが起こった時に助けを求められても、本心から助けたいとはなかなか思えないだろう?

結局、そういうことだと思うんだ。

自分ばかりが何もかも要求や都合や権利を通してもらえると考えるのは、最終的に自分の首を絞めると思うんだよ。

俺は、自分の子孫達にそういう失敗をしてほしくない。

だからしっかりと伝えていきたいんだ。

とは言えそれについてはまあ、元々メイトギア達は理解している。論理的に理性的に冷静に言葉で説明もできる。

ただ、人間っていうのは言葉だけじゃ納得できないことも多いのが事実だ。学校の授業で道徳について学んでも身に付かない人間が多いことからもそれは分かる。

その辺りからも、常に、

『話せば分かる』

わけじゃないことも事実だと思う。

だから言葉で伝わらない部分は、自身が態度で示す。

他人の話に耳を傾ける姿勢とか、どういう振る舞いが他人を気遣うことになるとか、一方的に要求を突き付けてくる相手をどうやっていなすとか、そういう具体的な<手本>を、実際に見せてやる必要があると思うんだ。

もっともそれすら、相手から信頼されてないと手本として見てもくれないだろうけどな。

となると、信頼してもらってるわけでもない赤の他人に伝えるのは難しくなる。そうなると自ずと、それらのことを最も効率的に伝えられる可能性が高いのが<親>だってことになるよな。

さりとて、親であっても子供から信頼されてないとやっぱり伝えるのは難しくなるんだろう。

相手から信頼されるというのがどれだけ大事かってことだと思うよ。

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