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新世代

走・凱編 せっかく生まれてきたんだから

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ビアンカを助けようとすることそのものが、俺達の<エゴ>だということは分かってる。

そんなことは重々承知だし、それが彼女を苦しめることもあるだろう。

でもな、そういうのは結局、やってみなきゃ分からないんだよ。

子供を生むのと同じだな。子供を生む時点では、幸せになれるかどうかなんて確定はしていない。

だから努力するんだ。幸せになるために。幸せにするために。

俺にとってビアンカは、まどかうらられいと同じだ。子供みたいなものなんだ。

実際、彼女は、生まれたばかりだ。まどかうらられいよりも小さな赤ちゃんと同じなんだよ。それが俺達のところに来てくれた。俺は彼女を受け入れた。

だから<自分の子供>として、彼女を幸せにしたい。せっかく生まれてきたんだからな。

<怪物のような姿>?

どこがだ? ここじゃまったく珍しくもないありふれた生き物の姿だ。化け物なんかじゃない。

そして、少なくとも俺もシモーヌもひかりあかりも、彼女の姿を恐れない。

子供達が彼女を怖がっていても、そんなのは普通の人間でもあることだ。あやそうと思って抱いたらギャン泣きされるとかな。そんなことをいちいち気にしてて生きてられるか。

じゅんはまだ怯えてるが、あらたはもうかなり慣れてきているようだし、ほむらさいも、自分からは近付こうとはしないものの、パニックを起こすほどは恐れてもいない。普通の人間関係でもこんなことは珍しくもないだろう。

自分の留守中にビアンカがいたことでしんえいも驚いた風ではあったものの、マンティアンであるえいはもとより、レオンであるしんにとって容易ならざる相手ではあっても逃げまどったりするほどじゃないんだろうな。

その上で、俺がビアンカを恐れてもいないし警戒もしてないからってこともあるんだと思う。

それに対してじゅんは、生まれた時から俺の下で育った訳じゃないし、ここでは非力な生き物の部類に入るパパニアンとしては恐ろしいだろう。これについては『怖がるな』と言うのも違うと思う。

怖がるのは別にいいんだよ。怖いからって一方的に攻撃したり忌避したりするってのをしなきゃいいだけで。

しかも、その手の人間としての気遣いとかの点は、人間として育ってきてなかったじゅんにはまだ理解できない。だからじゅんにそういう形での気遣いを求めるのも違う気がする。じゅんにはできない分を俺とシモーヌとひかりあかりで補えばいいだけだ。

ビアンカの葛藤は、人間だからこそのものだと思う。

それを、人間として、人間だからこそできる形で、受け止めたいんだ。この世に生まれてきて、俺の下にやってきた<子>として。

心配するなビアンカ。俺はお前を愛する。

生まれてきてくれて、俺の下に来てくれて、ありがとう。

俺はそう思う。

俺は心からお前を歓迎するよ、ビアンカ。

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