645 / 2,554
新世代
走・凱編 人間の心
しおりを挟む
密林の中は、これまで散々行き来したことでローバー一台分がちょうど通れるような<道>ができてたんだが、今回はビアンカの<席>を作ったことでかなり高さができてしまったので、上の方の上の方に覆い被さっていた枝を掃わないと通りにくくなっていた。
なので、メイフェアが枝を掃いつつゆっくりと前に進む。時間はかかっても無理をして事故でもあると困るからな。なにしろ<仮設の席>だし。
それでも、省エネを計りつつも戦闘モードを起動しての作業だったから、スムーズではあった。その様子を、ローバーに固定したドローンのカメラを通して俺も見守る。
「順調みたいだね」
気になるのか光もタブレットを覗き込んできた。
「ああ。さすがメイフェアだよ」
ちなみに、今はビアンカがいないからか子供達も思いっ切り全力で遊んでた。いくらかは慣れてきているとは言っても、さすがにまったく気にせずにいられるわけじゃないみたいだしな。
こちらも、時間を掛けて慣れていってもらうしかないだろう。
何でも一足飛びに結果を出そうとすると上手くいかないものだと思う。
特に人間の<心>というやつは複雑だ。俺達のビアンカへの想いを彼女に伝えようと思うのなら、まずこちらが彼女に歩み寄らなくちゃいけない。今はまだ精神的な余裕が彼女の側にはない。だったら、その余裕がある俺達の方が歩み寄るんだ。
シモーヌの時もそうだった。だから彼女は俺達を信頼してくれた。
確かにこの世には、こちらが譲れば譲っただけ付け込んでくるような厄介な人間もいる。しかし、そういう奴はそういう奴で個別に対処すればいいだけで、最初から自分は何一つ譲らないという人間は、たぶん信頼もされないだろうな。
だってそうだろう? 自分は譲る気がないのに相手に譲ってもらうことばかり期待してるようなのを信頼できるか? 俺には無理だ。
ただそれも、あくまで相手にその余裕があるはずにも拘らずって場合に限るが。
今回のビアンカやかつてのシモーヌのような場合には、譲ってもらうことは期待しない。そして、自分が相手を受け止めると決めた以上は、それを返してもらえなくても構わない。
そもそも、『救いたい』なんてのは、俺の一方的なエゴでしかないからな。シモーヌの時もそうだったが、本人にとってはあくまで『大きなお世話』という場合だって当然ある。特に今回のビアンカのような事例だと、
『どうして死なせてくれなかったの!?』
みたいなことだって言われる可能性はあるだろう。
それを、こっちの気持ちで一方的に助けようとするんだ。そんなんで感謝してもらえるとか譲ってもらえるとかを期待する方がどうかしてるんじゃないかな。
なので、メイフェアが枝を掃いつつゆっくりと前に進む。時間はかかっても無理をして事故でもあると困るからな。なにしろ<仮設の席>だし。
それでも、省エネを計りつつも戦闘モードを起動しての作業だったから、スムーズではあった。その様子を、ローバーに固定したドローンのカメラを通して俺も見守る。
「順調みたいだね」
気になるのか光もタブレットを覗き込んできた。
「ああ。さすがメイフェアだよ」
ちなみに、今はビアンカがいないからか子供達も思いっ切り全力で遊んでた。いくらかは慣れてきているとは言っても、さすがにまったく気にせずにいられるわけじゃないみたいだしな。
こちらも、時間を掛けて慣れていってもらうしかないだろう。
何でも一足飛びに結果を出そうとすると上手くいかないものだと思う。
特に人間の<心>というやつは複雑だ。俺達のビアンカへの想いを彼女に伝えようと思うのなら、まずこちらが彼女に歩み寄らなくちゃいけない。今はまだ精神的な余裕が彼女の側にはない。だったら、その余裕がある俺達の方が歩み寄るんだ。
シモーヌの時もそうだった。だから彼女は俺達を信頼してくれた。
確かにこの世には、こちらが譲れば譲っただけ付け込んでくるような厄介な人間もいる。しかし、そういう奴はそういう奴で個別に対処すればいいだけで、最初から自分は何一つ譲らないという人間は、たぶん信頼もされないだろうな。
だってそうだろう? 自分は譲る気がないのに相手に譲ってもらうことばかり期待してるようなのを信頼できるか? 俺には無理だ。
ただそれも、あくまで相手にその余裕があるはずにも拘らずって場合に限るが。
今回のビアンカやかつてのシモーヌのような場合には、譲ってもらうことは期待しない。そして、自分が相手を受け止めると決めた以上は、それを返してもらえなくても構わない。
そもそも、『救いたい』なんてのは、俺の一方的なエゴでしかないからな。シモーヌの時もそうだったが、本人にとってはあくまで『大きなお世話』という場合だって当然ある。特に今回のビアンカのような事例だと、
『どうして死なせてくれなかったの!?』
みたいなことだって言われる可能性はあるだろう。
それを、こっちの気持ちで一方的に助けようとするんだ。そんなんで感謝してもらえるとか譲ってもらえるとかを期待する方がどうかしてるんじゃないかな。
0
お気に入りに追加
174
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について
ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに……
しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。
NTRは始まりでしか、なかったのだ……
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
性奴隷を飼ったのに
お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。
異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。
異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。
自分の領地では奴隷は禁止していた。
奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。
そして1人の奴隷少女と出会った。
彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。
彼女は幼いエルフだった。
それに魔力が使えないように処理されていた。
そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。
でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。
俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。
孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。
エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。
※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。
※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。
俺のセフレが義妹になった。そのあと毎日めちゃくちゃシた。
ねんごろ
恋愛
主人公のセフレがどういうわけか義妹になって家にやってきた。
その日を境に彼らの関係性はより深く親密になっていって……
毎日にエロがある、そんな時間を二人は過ごしていく。
※他サイトで連載していた作品です
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる