644 / 2,387
新世代
走・凱編 羞恥
しおりを挟む
新暦〇〇二九年六月七日。
ビアンカの<家>は、俺達のそれと比べるとどこか<倉庫>のような印象があった。入り口がとにかく大きく、中も普通の人間の感覚だと広すぎるくらいに広い。天井も高い。
なのでやっぱり、倉庫のような感じはしてしまう。
それでも、ビアンカにとってはようやくのパーソナルスペースだ。
となると、彼女が自分で自分のことをできるように、炊事やら洗濯やらのことも考えなきゃな。
そんなこんなで、コーネリアス号への<里帰り>を行うことになった。
そしてそのための改造を、シモーヌが里帰り用に使ってるローバーに加えることにする。
もっとも、ローバー本体ではなく、ルーフキャリアを改造して彼女の<席>を作るんだ。
ちょうど、ビアンカの家を作るために伐採した木があるので、それを材料にエレクシアとイレーネが僅か三時間で作り上げてくれた。
まあ、<席>と言っても、見た目にはただの<箱>だけどな。彼女の力なら単にルーフキャリアにしがみついているだけでも振り落とされることはないと思うものの、密林の中を通り抜ける際に枝などが彼女の体を傷付ける可能性もあるし、そのためのガードということだ。
コーネリアス号でも、データを送信して、もっとしっかりしたものを工作室で作ってもらっている。今回のこれはあくまで仮だな。
という訳で、ビアンカとシモーヌとメイフェアとで里帰りすることになった。
ついでに走や凱や凛達も紹介してもらう。
とは言え、向こうにしてみると<招かれざる客>だろうが。
すまん。
「じゃあ、いってきます」
シモーヌがローバーの窓越しに俺に声を掛けると、ビアンカも、
「…いってきます…」
少々控え目な声ながら、<自分の席>から顔を出してそう言ってくれた。セシリアがシモーヌの服の一部を設え直してビアンカ用の服も作ってくれたこともあり、顔を合わせるくらいなら大丈夫になってきてくれたんだ。
ただやっぱり、体全体を晒すのは抵抗があるようだ。
怪物のような体ということに加え、クモ人間としての本体を覆う細かい毛が光を乱反射して白っぽく見えるとは言え、考えてみればある意味じゃ<裸>なんだよな。だから、男である俺の前に出るのはそういうニュアンスでも恥ずかしいらしい。
なので、彼女のクモのような体も覆える特製の<服>を、コーネリアス号で作ってもらっている。こちらで用意するには生地が足りなかったんだ。タープとかで代用するというのもさすがに武骨に過ぎるしな。
「なんだかすいません……」
本人も最初はどうしてそんなに俺の視線が気になるのかよく分かってなかったらしいが、落ち着いてくるとどうやらそういうことらしいというのが分かってきて、謝ってくれたりもした。
「ああ、いいよいいよ。その辺の感覚は本人でないと分からないだろうからね」
俺はなるべく穏やかな感じでそう応えたのだった。
ビアンカの<家>は、俺達のそれと比べるとどこか<倉庫>のような印象があった。入り口がとにかく大きく、中も普通の人間の感覚だと広すぎるくらいに広い。天井も高い。
なのでやっぱり、倉庫のような感じはしてしまう。
それでも、ビアンカにとってはようやくのパーソナルスペースだ。
となると、彼女が自分で自分のことをできるように、炊事やら洗濯やらのことも考えなきゃな。
そんなこんなで、コーネリアス号への<里帰り>を行うことになった。
そしてそのための改造を、シモーヌが里帰り用に使ってるローバーに加えることにする。
もっとも、ローバー本体ではなく、ルーフキャリアを改造して彼女の<席>を作るんだ。
ちょうど、ビアンカの家を作るために伐採した木があるので、それを材料にエレクシアとイレーネが僅か三時間で作り上げてくれた。
まあ、<席>と言っても、見た目にはただの<箱>だけどな。彼女の力なら単にルーフキャリアにしがみついているだけでも振り落とされることはないと思うものの、密林の中を通り抜ける際に枝などが彼女の体を傷付ける可能性もあるし、そのためのガードということだ。
コーネリアス号でも、データを送信して、もっとしっかりしたものを工作室で作ってもらっている。今回のこれはあくまで仮だな。
という訳で、ビアンカとシモーヌとメイフェアとで里帰りすることになった。
ついでに走や凱や凛達も紹介してもらう。
とは言え、向こうにしてみると<招かれざる客>だろうが。
すまん。
「じゃあ、いってきます」
シモーヌがローバーの窓越しに俺に声を掛けると、ビアンカも、
「…いってきます…」
少々控え目な声ながら、<自分の席>から顔を出してそう言ってくれた。セシリアがシモーヌの服の一部を設え直してビアンカ用の服も作ってくれたこともあり、顔を合わせるくらいなら大丈夫になってきてくれたんだ。
ただやっぱり、体全体を晒すのは抵抗があるようだ。
怪物のような体ということに加え、クモ人間としての本体を覆う細かい毛が光を乱反射して白っぽく見えるとは言え、考えてみればある意味じゃ<裸>なんだよな。だから、男である俺の前に出るのはそういうニュアンスでも恥ずかしいらしい。
なので、彼女のクモのような体も覆える特製の<服>を、コーネリアス号で作ってもらっている。こちらで用意するには生地が足りなかったんだ。タープとかで代用するというのもさすがに武骨に過ぎるしな。
「なんだかすいません……」
本人も最初はどうしてそんなに俺の視線が気になるのかよく分かってなかったらしいが、落ち着いてくるとどうやらそういうことらしいというのが分かってきて、謝ってくれたりもした。
「ああ、いいよいいよ。その辺の感覚は本人でないと分からないだろうからね」
俺はなるべく穏やかな感じでそう応えたのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
163
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる