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新世代

明編 完全に切り離して

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改めて考える。

高い攻撃性を持つ人間でも、<仲間>と認めた相手にはそれを向けずにいられるというのは、確かにあると思う。

だが、それは裏を返せば、

『仲間じゃない』

と思ってしまった時にはその抑制は効かなくなるという意味でもあるだろうな。

たとえ相手が同じ<人間>であっても。

実際、テロリストや反社会的な集団であっても、仲間のことは守るし、仲間が犠牲になれば報復を誓うというのはごくごく当たり前にあることだろう。

しかし、同じ人間に対して攻撃性を向けるというのは、当然、人間社会において原則的には禁忌とされている。テロリストや反社会的な集団(もちろんそれ以外も)が<敵と見做した人間>を攻撃することを、法律が許さないように。

一方、ここではたとえ相手が自分と同じ種族であっても、利害関係が対立すれば殺し合いになることだって普通のことだ。禁止はされていない。

それと同時に、パパニアンの群れであっても、雌を巡って雄同士が戦い、どちらかが命を落としたとしても罪に問われることはない。ボスの座を巡って戦い、命を落とすものがいたとしても、やはり罪には問われない。

最悪、群れがバラバラになったとしても、それぞれ一人でもそれなりに生きていけるから、人間社会ほどは『助け合う』ことに拘らなくても大丈夫だからというのもあるんだと、見ていて感じた。

人間は一人では生きていけないから<社会>を確実に維持していかないといけない。それがある。

人里離れたところで一人で住んでいる人間だってたまにいたりするものの、それでさえ、一人になる前は人間社会の中で守られて生きてきたはずだし、一人で生きていく為に必要な道具や知識は、誰かが用意してもたらしてくれたものだ。決して赤ん坊の時から完全に一人で、全てを自分の力だけで獲得して生きてきたわけじゃない。

俺が、ここに不時着したばかりの頃、エレクシアと光莉ひかり号のおかげで生き延びられたのと同じだろう。

だから人間は、人間社会そのものを守らなきゃいけないという宿命を背負っている。だから同じ人間に対して攻撃性を向けるのは疎まれるし、禁忌とされるんだって実感した。

決して自分の身近な<仲間>や<家族>さえ守っていればそれ以外の人間を蔑ろにしていいわけじゃない。

そんなことをしていれば、仲間ごと家族ごと人間社会から放逐されることだってありうる。

ロボット排斥主義者達が自分達だけでコミュニティを作って暮らしていたりという事例ですら、何だかんだと他の<人間社会>から資材や技術を調達することでコミュニティを存続させているんだ。以前にも言ったと思うが、地球の二十世紀初頭頃の生活を再現しているところでさえ、医療については現代のそれに頼っていたりするから、完全に切り離して生きることはできてないんだ。

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