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新世代

明編 子供達

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新暦〇〇二九年二月二十八日。



ひなたの成長は、本当に目を見張るばかりだ。と言っても、パパニアンとして考えればむしろ遅いくらいのものなんだろうけどな。

完全なパパニアンなら数日でしっかりと首も据わり、一週間もすれば掴まり立ちも普通のところが、ひなたの場合は首が据わるのに三週間余り、寝返りがその数日後、一人でお座りができるようになるのに一ヶ月ほどかかった。

これは、人間の赤ん坊に比べれば圧倒的に早い。しかし野生の中で生き延びるにはやはり遅いだろうな。純粋なパパニアンであるじゅんの場合はもう少し早かったとしても、本当によく生き延びてくれたものだと思うよ。

まどかの時は無事に育つんだろうか?っていう心配が先に立って、あまり余裕を持って見ていられなかったって印象がある。ただし、セシリアが傍で見守ってくれてたから記録は取れてるし、後で改めてゆっくりと見返そう。

しかし、ひなたも、二ヶ月が過ぎた頃には一人で立てるまでになった。その間の変化が目まぐるしくて、自分で俯せになって頭を上げたと思ったら這いずるように前進し始めて、

「おーっ、ずり這いかーっ!」

って歓声を上げて、かと思うと次の日にはしっかりと両手で自分の体を支えて四つん這いになったのを見て、

「ハイハイだ!」

と笑顔になって、さらに数日後には、あかりの時にコーネリアス号の工作室で作ってもらって代々使ってきたベビーベッドの柵に掴まって立ち上がった姿に、

「うお~っ! 立った立った♡」

とはしゃぎ、そして今では、一人で部屋の中を走ってるのを見守ってる状態だ。

さすがにまどかについて行けるところまでではないものの、それも一ヶ月と掛からずについて行けるようになるどころか、柱に掴まって登ったりもするようになるだろう。

そんな<弟>が可愛いのか、まどかも、

「ひなた! ひなた♡」

と名前を呼んで笑顔で抱き締めたりしてくれる。血は繋がってなくても、ちゃんと姉弟なんだなあ。それに比べると、普段はあらたにべったりで、生活は共にしてるわけじゃないうららのことは、<近所の友達>、もしくは<従姉>的な関係のようにも見えるな。

その一方で、れいのことは、れい自身がものすごく大人しくて普段は気配も感じさせない上にイレーネにべったりで関わってこないこともあってか、ほとんど意識していない、どころか、最近までいることに気付いていなかったような節さえある。

もっとも、れいの方も他の子達に積極的に関わろうとしないこともあって、まあ、これはこれで彼女らしい在り方なのかとも思うようにしてるが。

ここまでで四ヶ月ほど。普通の人間ならまだやっと『首がしっかりと据わって』って感じだろうか。

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