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新世代
明編 救出
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右手と右足が、純正の部品ではなくいわば義手義足になっているイレーネは、本来の要人警護仕様のメイトギアとしての性能は維持できていない。だから本当は、イレーネをこちらに残しエレクシアを救出に向かわせるべきだったと思う。
だが、今さらそれを言っても始まらない。
それに、右手右足のハンデをイレーネはしっかりと理解し、それを補う体の使い方を承知していた。
さすがに二千年の時間差があって元々の性能からしてまるで違うエレクシアには到底及ばないものの、それでも人間なんかとは比較にならない速度で彼女は密林を駆け抜けていく。
バージョンを重ねデータを蓄積したことで改良が進んだ義手と義足も、彼女を支えてくれている。
もっとも、いざとなれば使い捨ての武器にもなるという意味もあるが。
まあそれは今はさて置いて、十分とかからず彼女は現場へと到着する。その間、周辺のドローンも応援として駆けつけさせ、赤ん坊を守っていた。
ちょろちょろと自身の周辺を飛び回り、時には体当たりまで仕掛けてくるドローンには、赤ん坊の母親は辟易した様子を見せていたようだ。
それでも、イレーネが駆け付けるまでの十分は、俺にとってはものすごく長かった気がする。
『急げ…! 急いでくれ…!』
と心の中で叫んでしまうくらいには。
何度か本当に危ないこともあって、俺とシモーヌは目を逸らしてしまったりもした。
だからイレーネのカメラが現場を捉えた時には、
「よし!」
なんて声を上げてしまったくらいだ。
なにしろ、駆けつけさえすればマンティアンがイレーネに勝てる道理はないからな。
とは言え、今回は赤ん坊の救出が目的であって、子供を生んだばかりの母親をぶちのめす予定はない。
イレーネもそれはちゃんと分かっていて、ほとんど速度を落とさず、しかし赤ん坊には過剰な負担を掛けないように母親の目の前からかっさらってみせたことに、
「いよっしゃあーっ!!」
と叫んでしまった。
その声に、家の屋根に上って遊んでいた麗と和がビクッと体を竦ませるくらいだったな。
いやあ、驚かせてすまん。
と、それはそれとして、イレーネは赤ん坊を拾い上げると同時に手にしたナイフでへその緒を切断。移動しながら救命措置を行った。
生まれてすぐに母親から適切な処置を受けられなかったことで弱ってはいたものの、普段からイレーネ本体のポケットに収納していたガーゼなどを使って体を拭きあげつつ、気道に残っていた羊水を吐き出させ、呼吸を完全に確保。すると赤ん坊は、「にい…にい…」と小さいがはっきりした泣き声を上げ始めるのが、イレーネの聴覚センサーに捉えられたのだった。
だが、今さらそれを言っても始まらない。
それに、右手右足のハンデをイレーネはしっかりと理解し、それを補う体の使い方を承知していた。
さすがに二千年の時間差があって元々の性能からしてまるで違うエレクシアには到底及ばないものの、それでも人間なんかとは比較にならない速度で彼女は密林を駆け抜けていく。
バージョンを重ねデータを蓄積したことで改良が進んだ義手と義足も、彼女を支えてくれている。
もっとも、いざとなれば使い捨ての武器にもなるという意味もあるが。
まあそれは今はさて置いて、十分とかからず彼女は現場へと到着する。その間、周辺のドローンも応援として駆けつけさせ、赤ん坊を守っていた。
ちょろちょろと自身の周辺を飛び回り、時には体当たりまで仕掛けてくるドローンには、赤ん坊の母親は辟易した様子を見せていたようだ。
それでも、イレーネが駆け付けるまでの十分は、俺にとってはものすごく長かった気がする。
『急げ…! 急いでくれ…!』
と心の中で叫んでしまうくらいには。
何度か本当に危ないこともあって、俺とシモーヌは目を逸らしてしまったりもした。
だからイレーネのカメラが現場を捉えた時には、
「よし!」
なんて声を上げてしまったくらいだ。
なにしろ、駆けつけさえすればマンティアンがイレーネに勝てる道理はないからな。
とは言え、今回は赤ん坊の救出が目的であって、子供を生んだばかりの母親をぶちのめす予定はない。
イレーネもそれはちゃんと分かっていて、ほとんど速度を落とさず、しかし赤ん坊には過剰な負担を掛けないように母親の目の前からかっさらってみせたことに、
「いよっしゃあーっ!!」
と叫んでしまった。
その声に、家の屋根に上って遊んでいた麗と和がビクッと体を竦ませるくらいだったな。
いやあ、驚かせてすまん。
と、それはそれとして、イレーネは赤ん坊を拾い上げると同時に手にしたナイフでへその緒を切断。移動しながら救命措置を行った。
生まれてすぐに母親から適切な処置を受けられなかったことで弱ってはいたものの、普段からイレーネ本体のポケットに収納していたガーゼなどを使って体を拭きあげつつ、気道に残っていた羊水を吐き出させ、呼吸を完全に確保。すると赤ん坊は、「にい…にい…」と小さいがはっきりした泣き声を上げ始めるのが、イレーネの聴覚センサーに捉えられたのだった。
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