569 / 2,387
新世代
明編 陣痛
しおりを挟む
新暦〇〇二八年十月二十九日。
はてさて、なんだかんだとありつつも、結局は俺の<群れ>に合流することになった鋭だが、やはりマンティアンらしく普段は気配を消してどこにいるのか掴ませないような感じだった。
だが、基本的には俺の家の日当たりのいい場所で甲羅干しと言うか日向ぼっこをしてることが多い。
狩りの時以外には外をうろつくこともなく、刃や明やっ丈と同じく、いるのかいないのかよく分からない存在となりそうだ。
とは言え、順は気が気じゃない。
「大丈夫だよ、お父さんがいたら平気だから」
ボスである俺が侵入を許したというのは、安全という意味だと、灯が順に説明してくれる。
それでも、やっぱり怖いものは怖いし、天敵である事実は変わらない。
臨月を迎え、もういつ子供が生まれてもおかしくない光を天敵から守る為にも、順は、家に籠城を決め込んだようだ。
これまでは、縄張りの見回りも兼ねて密林に餌を取りに行っていたりもしたが、今ではセシリアが届けてくれる食事だけで済ましている。
こうなると運動不足を心配しないといけないものの、家の中の構造は、わざと梁などを剥き出しにした上に天井を高くし立体的な動きがしやすいように作ってあるので、それをしっかりと活用すればそんなに鈍ることもないだろう。
光も、それで積極的に体を動かして運動不足にならないようにしているし。
それだけじゃ足りない分を、外に出て散歩するなどしてこれまで補ってきた。
だが、いよいよ<その時>が来たようだ。
「う…うう……!」
呻き声をあげた光のバイタルサインを常時モニタリングしていたセシリアが、
「陣痛が始まりました」
と告げてくる。
「あ、ああ、分かった。よろしく頼む」
幸い、ここには、密が焔と新を産んだ時にも適切な対処をしてくれたセシリアをはじめとした、本来はヘルパーロボットであるメイトギアが何体もいる。そういう意味では何の心配もない。万が一の時には治療用カプセルもあるしな。
それでもやっぱり心配は心配なので俺も付き添ってやりたかったが、順も灯もいるということで中に入れさせてもらえなかった。
「お父さんは和の世話をしてて」
って、灯に追い出されたんだ。
まあ、娘の出産に立ち会う父親の話は滅多に聞かないので当然と言えば当然なんだろうが、なんか寂しいなあ……
「元気を出してください、お父さん」
俺と同じように入れさせてもらえなかったシモーヌが、寝ている和抱いて手持ち無沙汰にしていた俺を励ましてくれる。彼女も、セシリアがいれば十分ということと、治療用カプセルの準備など、万が一の時の対応に回ったんだよな。
はてさて、なんだかんだとありつつも、結局は俺の<群れ>に合流することになった鋭だが、やはりマンティアンらしく普段は気配を消してどこにいるのか掴ませないような感じだった。
だが、基本的には俺の家の日当たりのいい場所で甲羅干しと言うか日向ぼっこをしてることが多い。
狩りの時以外には外をうろつくこともなく、刃や明やっ丈と同じく、いるのかいないのかよく分からない存在となりそうだ。
とは言え、順は気が気じゃない。
「大丈夫だよ、お父さんがいたら平気だから」
ボスである俺が侵入を許したというのは、安全という意味だと、灯が順に説明してくれる。
それでも、やっぱり怖いものは怖いし、天敵である事実は変わらない。
臨月を迎え、もういつ子供が生まれてもおかしくない光を天敵から守る為にも、順は、家に籠城を決め込んだようだ。
これまでは、縄張りの見回りも兼ねて密林に餌を取りに行っていたりもしたが、今ではセシリアが届けてくれる食事だけで済ましている。
こうなると運動不足を心配しないといけないものの、家の中の構造は、わざと梁などを剥き出しにした上に天井を高くし立体的な動きがしやすいように作ってあるので、それをしっかりと活用すればそんなに鈍ることもないだろう。
光も、それで積極的に体を動かして運動不足にならないようにしているし。
それだけじゃ足りない分を、外に出て散歩するなどしてこれまで補ってきた。
だが、いよいよ<その時>が来たようだ。
「う…うう……!」
呻き声をあげた光のバイタルサインを常時モニタリングしていたセシリアが、
「陣痛が始まりました」
と告げてくる。
「あ、ああ、分かった。よろしく頼む」
幸い、ここには、密が焔と新を産んだ時にも適切な対処をしてくれたセシリアをはじめとした、本来はヘルパーロボットであるメイトギアが何体もいる。そういう意味では何の心配もない。万が一の時には治療用カプセルもあるしな。
それでもやっぱり心配は心配なので俺も付き添ってやりたかったが、順も灯もいるということで中に入れさせてもらえなかった。
「お父さんは和の世話をしてて」
って、灯に追い出されたんだ。
まあ、娘の出産に立ち会う父親の話は滅多に聞かないので当然と言えば当然なんだろうが、なんか寂しいなあ……
「元気を出してください、お父さん」
俺と同じように入れさせてもらえなかったシモーヌが、寝ている和抱いて手持ち無沙汰にしていた俺を励ましてくれる。彼女も、セシリアがいれば十分ということと、治療用カプセルの準備など、万が一の時の対応に回ったんだよな。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
163
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる