上 下
544 / 2,387
新世代

誉編 最弱

しおりを挟む
ほまれ達が去った後、俺はエレクシアとイレーネを待った。

正直、疲労困憊という感じだ。俺自身はほとんど何もしてないが、状況を見守っているだけでごっそり神経を削られたよ、

だが、それと同時にほまれ達の<強さ>も実感できた。

がくのような非常識な存在が相手だとさすがにエレクシア達の協力がなければ大きな犠牲も出るだろうが、群れそのもので連携して強敵に立ち向かうという知恵がある限り、普通の天敵相手ならこれからも自分達の力で何とかしてくれるんじゃないだろうか。

これまでも基本的にはそう思っていたものの、正直、どこか信じ切れてなかったのも本音だった。

なにしろ、親にとって子供はいつまで経っても<子供>だからな。

そういう部分で、『子供だから』っていうフィルターが掛かってたんだろう。

今後は、今まで以上に気にし過ぎないようにしよう。あいつらのことはあいつらに任せよう。

と、自分に言い聞かせることになるだろうな。今まで以上に。

なにしろ、子供がいくつになろうがついつい心配してしまうというのも親心というものだろうし。

そんなことを考えているところに、

「ただいま戻りました」

と声が掛けられる。エレクシアとイレーネだった。

「お疲れ様。無事でよかったよ」

ロボットだから疲れる筈がないんだが、ついそう言ってしまう。こうやって労いたくなってしまうのも人間ってものじゃないかな。

しかし、エレクシアは、

「ダメージは許容範囲内です。問題ありません」

と、素っ気ない。

だが、それに続けて、

「ですが、ありがとうござます」

とも言ってくれた。それがまた俺にとっても心地好い。

そうか…相手を労うことで自分も癒されるんだな……

そんなことも思ってしまう。でもそれは、エレクシア達が、そう感じるに値するほどに俺達に献身してくれてるからというのもあるんだろう。

ローバーのドアを開けて乗り込もうとするエレクシアとイレーネに、彼女達の強さを知らないボクサー竜ボクサー達が襲い掛かるものの、それをハエでも追い払うかのように軽々と退ける。

俺がもし、ローバーの外に出ていたら同じように襲われて、しかし彼女達のようには退けられなくて、下手をすれば命を落としていただろう。

つくづく、俺はここでは、シモーヌと並んで最弱なんだろうなと感じるよ。

とは言え、ほまれだって決して『強い』と言えるほど強くはない。パパニアンの中ではおそらく強い方の部類に入るだろうとはいえ、マンティアンを相手に真っ向戦えば一分ももたないに違いない。

それでも、あいつはちゃんと自分の群れを守ってる。

<パパニアンのボス>として、しっかり役目を果たしてる。

家に戻るローバーの中で、メイフェアのカメラに捉えられている、あおみことを従えつつ群れの仲間の無事を確認しようとでもするかのように見渡しているほまれの姿を見ながら、俺も頑張らなくちゃいけないなと改めて思わされたのだった。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

精霊のお仕事

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:78pt お気に入り:123

転移したらダンジョンの下層だった

Gai
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:4,068pt お気に入り:4,654

悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:13,569pt お気に入り:6,021

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,123pt お気に入り:281

追放の破戒僧は女難から逃げられない

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:611pt お気に入り:167

冒険がしたい創造スキル持ちの転生者

Gai
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:4,700pt お気に入り:9,008

異世界転移で生産と魔法チートで誰にも縛られず自由に暮らします!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:220pt お気に入り:2,452

処理中です...