486 / 2,381
新世代
誉編 なんとかなるなる
しおりを挟む
新暦〇〇二七年六月四日。
誉に連れられた和が俺達の<家族>に加わって数日、光は、シモーヌやセシリアのサポートを受けながら母親としての役目を果たしていた。
なので、調査の仕事は当分は休みだ。
俺も、和の様子が気になるから、しばらく調査は休むことにする。
と言うか、可愛くてなあ。ずっと見てたいんだよ。しかも光がまた、健気に<母親>してるんだ。
が、それが高じたのか、
「おっぱいが張ってきてる……? 母乳が出る……?」
などと言いだした。
するとシモーヌが、
「強い母性に目覚めると、それによって分泌されたホルモンにより、妊娠を経なくても母乳が出る例は確かにあります。光もそれでしょうね」
と説明してくれる。
「そうなのか…? いやはや、生命の神秘だな……!」
まさか妊娠出産の前におっぱいが出るようになるとか、素直に驚きだよ。
そして本当に、セシリアに<母乳マッサージ>を受けた光は、母乳が出るようになった。
と言っても、実際に妊娠した訳ではないからか、量としては微々たるものだったが、
『母親に乳を含ませてもらう』
ことが赤ん坊にとっては大事らしく、光に抱かれているとすごく落ち着いていたようだった。
ただ、一方で、
「私にも抱かせて」
と灯が抱くと、
「ふい…ふぅう、ういぃ……!」
って感じで明らかにぐずり出す。どうやら和にとっては完全に光が母親で、彼女とは違うってことが認識できているようだな。
「なんか悔しい。自信なくすわ~…!」
灯が軽く落ち込みながらそう漏らす。
「ごめん……」
光は申し訳なさそうに言う。
そこに俺は、
「気にしなくていい。和は光を母親と認識したというだけのことだ。それに、灯が穏やかに接してくれてればそのうち危険な相手じゃないってことが伝わって安心してくれる。
そこで変に意識して緊張すればそれを赤ん坊も察してしまって不安になるんだ」
誉達については母親にほとんど任せてたとはいえ、光と灯については人間として育てたから、俺も積極的に関わってきた。おむつの交換もミルクもお風呂もやった。
その際に得た実感を、灯にも伝えるんだ。
「心配しなくても、俺にもできたことだ。灯にもできるようになる。焦らなくていい。子供の前では穏やかな気持ちでいることが大事なんだ。焦りやイライラは禁物だぞ。
だいたい父親なんて自分が生んだわけでもないのに<親>になるんだぞ?
それを思えば接し方次第で赤の他人でも<親>にもなれる。
相手をちゃんと人間として敬うことができれば、後は『何とかなるなる』って感じで軽い気持ちでいればいい。
それがコツだよ」
誉に連れられた和が俺達の<家族>に加わって数日、光は、シモーヌやセシリアのサポートを受けながら母親としての役目を果たしていた。
なので、調査の仕事は当分は休みだ。
俺も、和の様子が気になるから、しばらく調査は休むことにする。
と言うか、可愛くてなあ。ずっと見てたいんだよ。しかも光がまた、健気に<母親>してるんだ。
が、それが高じたのか、
「おっぱいが張ってきてる……? 母乳が出る……?」
などと言いだした。
するとシモーヌが、
「強い母性に目覚めると、それによって分泌されたホルモンにより、妊娠を経なくても母乳が出る例は確かにあります。光もそれでしょうね」
と説明してくれる。
「そうなのか…? いやはや、生命の神秘だな……!」
まさか妊娠出産の前におっぱいが出るようになるとか、素直に驚きだよ。
そして本当に、セシリアに<母乳マッサージ>を受けた光は、母乳が出るようになった。
と言っても、実際に妊娠した訳ではないからか、量としては微々たるものだったが、
『母親に乳を含ませてもらう』
ことが赤ん坊にとっては大事らしく、光に抱かれているとすごく落ち着いていたようだった。
ただ、一方で、
「私にも抱かせて」
と灯が抱くと、
「ふい…ふぅう、ういぃ……!」
って感じで明らかにぐずり出す。どうやら和にとっては完全に光が母親で、彼女とは違うってことが認識できているようだな。
「なんか悔しい。自信なくすわ~…!」
灯が軽く落ち込みながらそう漏らす。
「ごめん……」
光は申し訳なさそうに言う。
そこに俺は、
「気にしなくていい。和は光を母親と認識したというだけのことだ。それに、灯が穏やかに接してくれてればそのうち危険な相手じゃないってことが伝わって安心してくれる。
そこで変に意識して緊張すればそれを赤ん坊も察してしまって不安になるんだ」
誉達については母親にほとんど任せてたとはいえ、光と灯については人間として育てたから、俺も積極的に関わってきた。おむつの交換もミルクもお風呂もやった。
その際に得た実感を、灯にも伝えるんだ。
「心配しなくても、俺にもできたことだ。灯にもできるようになる。焦らなくていい。子供の前では穏やかな気持ちでいることが大事なんだ。焦りやイライラは禁物だぞ。
だいたい父親なんて自分が生んだわけでもないのに<親>になるんだぞ?
それを思えば接し方次第で赤の他人でも<親>にもなれる。
相手をちゃんと人間として敬うことができれば、後は『何とかなるなる』って感じで軽い気持ちでいればいい。
それがコツだよ」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
162
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる