483 / 2,566
新世代
誉編 四例目
しおりを挟む
かつては俺も、ロボット、特にメイトギアに対して強い嫌悪感を抱いていた。
だがそれは、今から思えばお門違いの八つ当たりに過ぎなかったというのがよく分かる。
彼女達はそういう風に作られただけの存在だ。そんな彼女達に対して過度の嫌悪感を向けるのは、ほぼ言いがかりのようなものだろう。責任は、あくまで彼女達をそう作った人間の側にある。
人間社会にいた頃にはそれに気付けなかったんだよな。なんだか申し訳ない。
なんて思ってしまうのも、彼女達が人間に似すぎてるせいだな。
しかしそれも必要だから人間に似せて作られたのであって、あくまで人間の側の都合か。
と、これらも結局、メイフェアがあまりに健気だからついつい考え込んでしまう感じかも知れないな。
って、パパニアンの育児の話をしてたはずが、どうしてこうなった?
まあいい。
とにかく、誉達の群れでは、他とは若干違う子育てが行われていたのは事実だろう。
それがどういう影響をもたらすのかは分からないが、少なくともあいつの群れの雰囲気そのものは決して悪いものじゃなかったと思う。
だが……
新暦〇〇二七年五月二十九日
今日は俺とシモーヌとエレクシアで調査に出るはずだったんだが……
その準備をしていた時、
「ぎあっ!?」
という、悲鳴とも何ともつかない声が、誉の群れの中で上がった。
そのただならぬ気配に、メイフェアがすぐさま駆け付ける。と言っても、カメラで映像が確認できる位置まで近付くだけだが。
すると、雌の一人が興奮した様子で。
「ぎあっ! ぎあっ!!」
と何度も叫んでいた。その足元には、
「……まさか……!?」
「あれは……!」
メイフェアから送られてくるカメラ映像を見た俺とシモーヌが思わず声を上げた。
そこにあった、いや、『いた』のは、見た目にはまぎれもない<人間の赤ん坊>だったのである。
すぐにピンときた。光や灯や順と同じ事例だ。しかしだからこそ、自分の腹から出てきたその<異形の何か>に、母親である雌が狼狽えているんだ。
しかしそれはマズい事態だった。母親は、自分とは似ても似つかぬその子を我が子だと認識できずに育児を放棄するか、場合によってその場で殺してしまう可能性もある。
とはいえ、普通のパパニアンの社会においては、その赤ん坊は淘汰されるべき存在であり、生まれてすぐに死んでしまうのが当然の成り行きだった。
だが、俺達人間はそこまで割り切れない。
だから俺はメイフェアに命令した。
「その子を保護しろ!」
ってな。
が、
「承知しました…!」
と、俺の命令を受けたメイフェアが動くよりも早く、その赤ん坊を拾い上げた者がいた。
「誉……!?」
無意識にその名を呼んだ俺の視線の先には、赤ん坊を抱き上げた誉を捉えた映像が映し出されていたのだった。
だがそれは、今から思えばお門違いの八つ当たりに過ぎなかったというのがよく分かる。
彼女達はそういう風に作られただけの存在だ。そんな彼女達に対して過度の嫌悪感を向けるのは、ほぼ言いがかりのようなものだろう。責任は、あくまで彼女達をそう作った人間の側にある。
人間社会にいた頃にはそれに気付けなかったんだよな。なんだか申し訳ない。
なんて思ってしまうのも、彼女達が人間に似すぎてるせいだな。
しかしそれも必要だから人間に似せて作られたのであって、あくまで人間の側の都合か。
と、これらも結局、メイフェアがあまりに健気だからついつい考え込んでしまう感じかも知れないな。
って、パパニアンの育児の話をしてたはずが、どうしてこうなった?
まあいい。
とにかく、誉達の群れでは、他とは若干違う子育てが行われていたのは事実だろう。
それがどういう影響をもたらすのかは分からないが、少なくともあいつの群れの雰囲気そのものは決して悪いものじゃなかったと思う。
だが……
新暦〇〇二七年五月二十九日
今日は俺とシモーヌとエレクシアで調査に出るはずだったんだが……
その準備をしていた時、
「ぎあっ!?」
という、悲鳴とも何ともつかない声が、誉の群れの中で上がった。
そのただならぬ気配に、メイフェアがすぐさま駆け付ける。と言っても、カメラで映像が確認できる位置まで近付くだけだが。
すると、雌の一人が興奮した様子で。
「ぎあっ! ぎあっ!!」
と何度も叫んでいた。その足元には、
「……まさか……!?」
「あれは……!」
メイフェアから送られてくるカメラ映像を見た俺とシモーヌが思わず声を上げた。
そこにあった、いや、『いた』のは、見た目にはまぎれもない<人間の赤ん坊>だったのである。
すぐにピンときた。光や灯や順と同じ事例だ。しかしだからこそ、自分の腹から出てきたその<異形の何か>に、母親である雌が狼狽えているんだ。
しかしそれはマズい事態だった。母親は、自分とは似ても似つかぬその子を我が子だと認識できずに育児を放棄するか、場合によってその場で殺してしまう可能性もある。
とはいえ、普通のパパニアンの社会においては、その赤ん坊は淘汰されるべき存在であり、生まれてすぐに死んでしまうのが当然の成り行きだった。
だが、俺達人間はそこまで割り切れない。
だから俺はメイフェアに命令した。
「その子を保護しろ!」
ってな。
が、
「承知しました…!」
と、俺の命令を受けたメイフェアが動くよりも早く、その赤ん坊を拾い上げた者がいた。
「誉……!?」
無意識にその名を呼んだ俺の視線の先には、赤ん坊を抱き上げた誉を捉えた映像が映し出されていたのだった。
0
お気に入りに追加
176
あなたにおすすめの小説
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる